介護の未来とは?現在介護業界が抱える課題から未来に向けての解決策まで詳しくご紹介

西暦とミニチュアの老夫婦
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介護の未来は人手不足が継続する見込みの一方で、ICTやAIの導入による業務の効率化が期待されています。
介護業界への就職を考えているけれど、未来に向けてあまり明るい話題も聞かないのでどうしようか迷っている学生さんはいませんか?

この記事では現在介護業界が抱える課題から、それを介護の未来に向けてどのように解決しようとしているのかまで詳しくご紹介します。

介護の未来とは?

青空と高齢女性の後ろ姿
博報堂生活総合研究所では、未来予測関連の記事やレポートから未来予測のデータベース「未来年表」を作成しホームページで毎月20日に更新していますが、2023年3月現在介護の未来が118項目掲載されています。

各未来予測データには「類型」(予測、推計、計画、政策目標、決定など)「出典」「資料名」「発表時期」が付記されており、予測データの数値もかなり具体的なものとなっているのが特徴的です。

未来年表では介護の未来が2068年まで予想されているため、このデータベースを基に介護業界の未来における課題やその解決方法を見ていきましょう。

参考:博報堂生活総合研究所「未来年表 介護の未来」

未来の介護業界における課題とは?

ミニチュアの家族
未来年表で予想されている介護業界における課題には、どのようなことがあるのでしょうか。

5つご紹介します。

要介護認定者数の増加

未来年表の介護の未来では、2025年に団塊の世代が75才を超えるため全国の要介護者の数が800万人規模になると予想しています。

厚生労働省が2020年に発表した「令和2年度 介護保険事業報告」で発表された年度末現在での要介護認定者数の推移は次の通りです。

 

2000年

2005年

2010年

2015年

2020年

要介護認定者数

256万2千人

432万3千人

506万2千人

620万4千人

681万8千人

2000年を100とした時の数値

100

169

198

242

266

要介護認定者数は5年間で60万人~110万人程度ずつ増加しているのを考えると、2025年に全国の要介護認定者数が800万人規模になるというのは現実的な数字だと言えるでしょう。

参考:厚生労働省「令和2年度 介護保険事業状況報告(年報)」

介護費用の増加

未来年表の介護の未来では、2025年までに介護費用が19兆円~24兆円となり、2060年までこの費用は増え続けると予測しています。

2022年4月13日に財務省で開催された財政制度分科会の資料によると、介護費用は介護保険制度を作った時の推計より早く増加していることがわかりました。

介護保険制度における、制度を作った時の費用推計と実際にかかった費用を比較すると次のような結果となります。

 

2000年

2005年

2010年

2015年

2020年

介護保険を作った時に推計した費用

1.1兆円

5.3兆円

6.9兆円

実際にかかった費用

3.6兆円

6.3兆円

7.8兆円

9.8兆円

予算

12.4兆円

財務省では、介護費用が介護保険を作った時に推計した費用より多くかかっているのは、居宅サービス費用の増加や当初の見込みを上回る要介護認定者数の増加が原因だとしています。

2000年から介護保険制度に実際にかかった費用が5年間で2~3兆円ずつ増加しているのを見ると、2025年には団塊の世代が75才を超えるという要因もあり、19兆円までには達しなくとも、近い数字となることが予想されます。

参考:財務省「財政制度分科会(令和4年4月13日開催)資料一覧」

介護業界における人材不足

未来年表の介護の未来では、2025年には団塊の世代が75歳以上になりきるため、介護職員240万人~250万人の増員が必要になり、2035年には介護現場の人手が69万人不足すると予測されています。

また2040年には介護や医療の現場における人材ニーズの高さから、事務職員を含めた医療、介護の職員数が1065万人に達し(242万人増)、全就業者の18.8%を占めることも予測されているのです。

2021年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和3年度介護労働実態調査」によると、介護サービスに従事する従業員の過不足状況は次のような結果でした。

 

大いに不足

不足

やや不足

適当

過剰

全体

8.5%

21.5%

33.0%

36.6%

0.4%

訪問介護員

25.1%

29.4%

26.1%

18.9%

0.5%

サービス提供責任者

5.7%

12.1%

15.8%

65.2%

1.3%

介護職員

10.2%

21.2%

33.0%

34.6%

1.0%

看護職員

6.1%

14.3%

24.3%

53.4%

1.9%

生活相談員

1.7%

5.7%

14.6%

77.2%

0.8%

PT・OT・STなど

2.7%

7.6%

19.9%

68.1%

1.7%

介護支援専門員

4.5%

10.1%

18.3%

66.5%

0.7%

全体では63.0%の事業所が不足感を持ち、その中でも訪問介護員の不足感が大きいのが特徴的です。

これらのことから、2025年に向けて介護業界での人材確保が急務となるのは間違いないでしょう。

参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査」

介護難民の増加

未来年表の介護の未来では、2025年には全国で約43万人の介護難民が生じ東京圏1都3県が全体の3割(約13万人)を占め、2040年には東京圏1都3県の介護難民が38万人になると予測されています。

介護難民全体を示す数値ではありませんが、厚生労働省が2022年12月に発表した特別養護老人ホームの入所を申し込んでいるものの、入居できていない人の数は次のような結果でした。

 

2019年度

2022年度

増減数

要介護3以上の全体数

29.2万人

25.3万人

3.9万人減少(13.5%減少)

要介護3以上で在宅の人の数

11.6万人

10.6万人

1.0万人減少(9.1%減少)

要介護1・2の全体数

3.4万人

2.2万人

1.2万人減少(35.3%減少)

要介護1・2で在宅の人の数

1.6万人

1.1万人

0.5万人減少(31.3%減少)

特別養護老人ホームの待機者数を減らすだけでは介護難民の増加は防止できないものの、少しずつでも待機者数を減らしていくことが介護難民を減らす要因の1つとなっていくでしょう。

参考:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」

老老介護や認認介護の増加

未来年表の介護の未来では、直接老老介護や認認介護自体の増加は予想されていませんが、2030年には老化による運動機能の低下を予防し、治療する技術が実現すること、東北大学が開発した介護ロボットが実証段階に進むことが予測されています。

2019年に厚生労働省が発表した国民生活基礎調査において、要介護者のいる世帯の世帯構造を見ると、核家族世帯が40.3%で最も多いことがわかりました。

また要介護者と同居している主な介護者の年齢組み合わせ別の割合の年次推移は次の通りでした。

 

2001年

2004年

2010年

2016年

2019年

60才以上同士

54.4%

58.1%

62.7%

70.3%

74.2%

65才以上同士

40.6%

41.1%

45.9%

54.7%

59.7%

75才以上同士

18.7%

19.6%

25.5%

30.2%

33.1%

このことから老老介護や認認介護は年々少しずつ増加傾向にあるものの、将来に向けた対策も医療やIT活用などさまざまな方面から進んでいるのがわかります。

参考:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」

未来の介護業界における課題を解決するには?

スタッフと柔軟体操をする高齢者
未来年表で予測されている、介護業界におけるさまざまな課題を解決するために現在どのような取り組みがされているのでしょうか。

課題別にご紹介します。

介護予防の活用

要介護認定者数が増加し、重度な要介護状態となっても地域で暮らし続けるために、介護保険法には「介護予防・日常生活支援総合事業」があります。

具体的には団塊の世代が75才以上となる2025年に向けて、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を行うものです。

地域包括ケアシステムにおいては生活支援・介護予防を、高齢者が住み慣れた地域で生活するための基本となる要素と位置づけています。

生活支援・介護予防を地域包括ケアシステムの中で民間企業、NPO、ボランティアなど多岐に渡る団体が行うことで、要介護度が上がらないよう、また地域で暮らし続けられるよう住民とともにサポートをしていくのです。

参考:厚生労働省「総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)」

介護費用の見直し

介護費用の増加に伴い、2022年4月13日に財務省で開催された財政制度分科会では、介護サービス提供体制の効率化に向けて、次のような取り組みをすることが話し合われました。

取り組みの項目

概要

業務の効率化と経営の大規模化・協働化

①ロボット・AI・ICT などの実用化の推進
②タスクシフティング、シニア人材の活用推進
③文書量削減などで業務の効率化を進める

介護施設・事業所などの経営状況の把握

・法律を改正して介護サービス事業所に財務状況の報告・公表を義務づけて経営状況の見える化を推進する

利用者負担の見直し

・介護保険を持続するため利用者負担の見直しを始めとした介護保険給付の範囲の見直しに取り組む

ケアマネジメントの利用者負担の導入など

・今までは例外的に利用者負担がなかったが介護保険が定着したため今後は利用者負担を導入する

多床室の室料負担の見直し

・2015年に特別養護老人ホームのみ見直しがされたが今後は、介護老人保健施設・介護医療院・介護療養病床に対しても見直しを行う

区分支給限度額のあり方の見直し

・区分支給限度額の対象外に位置付けられている加算が増加しているため、この例外措置を見直す

地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)のあり方の見直し

・費用低減計画を実施する

軽度者へのサービスの地域支援事業への移行など

・要介護1・2への訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を検討する

軽度者に対する居宅療養管理指導サービスなどの給付の適正化

・「通院が困難な利用者」に対して給付するという要件を満たさない場合支給しない

介護給付費適正化事業(適正化計画)の見直し

・都道府県が主体的に市町村の適正化事業の進捗状況を公表するなど「見える化」を進める

居宅サービスについての保険者などの関与のあり方

・保険者である市町村が実際のニーズに合わせて端的に地域のサービス供給量をコントロールできるようにする

介護サービスの提供が効率化し、介護保険料が適切に使われることで介護費用増加の問題は少しずつ解決していくでしょう。

参考:財務省「財政制度分科会(令和4年4月13日開催)資料一覧」

介護職員の処遇改善

介護業界における人材不足への対策として、国では介護職員の処遇改善に取り組んでいます。

具体的には介護職員の賃金改善を目的として、介護保険で次のような加算を請求できるようにしたのです。

項目

概要

加算の届出をした事業所

介護職員処遇改善加算 

・介護職員を対象としキャリアパス要件、職場環境要件に取り組むことで加算される

94.1%

介護職員等特定処遇改善加算

・事業所が経験や技能があると認めた職員を対象とし介護職員処遇改善加算を取得するなどの条件を満たすと加算される

72.8%

介護職員等ベースアップ等支援加算

・介護職員や他の職員を対象とし介護処遇改善加算を取得するなどの条件を満たすと加算される

2021年に厚生労働省が発表した「令和3年度介護従事者処遇状況等調査」によると表のように加算の届出は積極的に行われ、給与引き上げの実施方法としては「定期昇給を実施(予定)」と回答した事業所が74.5%、「各種手当の引き上げまたは新設(予定)」が21.4%でした。

また2022年に新しく介護職員等特定処遇改善加算の届出をした事業所において、介護職員の平均給与額を2021年9月と2022年9月で比較すると、13,410円増加しています。

介護職員の処遇改善を行うことで、人手不足も少しずつ解消されていくでしょう。

参考:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」

ICTや介護ロボットの活用

介護業界の人材不足への対策としては、ICTや介護ロボットの利用促進も行われています。

介護のICT活用については、総務省の「ICT超高齢社会構想会議」で超高齢社会に対応するのを目的としたICT活用のあり方について検討が進められています。

一方介護ロボットについては、経済産業省と国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)で「介護ロボットポータルサイト」を運営し、開発機器や製品化した機器についての情報提供、また導入事例動画の配信などを行っています。

また厚生労働省でも介護ロボット開発のための補助金・助成金活用を呼び掛けたり、2021年の介護報酬改訂で見守り機器を導入した際に評価することの周知などを行ったりして普及に努めているのです。

参考:総務省「ICT超高齢社会構想会議」
参考:国立研究開発法人日本医療研究開発機構「介護ロボットポータルサイト」
参考:厚生労働省「介護ロボットの開発・普及の促進」

介護移住

介護難民への対策の1つとして、介護移住があります。

介護移住とは医療や介護にゆとりのある地域に移住することで、2015年に日本創成会議によって提言された「東京圏高齢化危機回避戦略」では全国各地の医療・介護の余力を評価し、医療・介護に余力のある41地域への移住を勧めているのです。

介護移住が進むことで、地方で働きたいケアワーカーの人たちの選択肢がさらに広がることが予想されます。

参考:日本創成会議・首都圏問題検討分科会 提言「東京圏高齢化危機回避戦略」記者会見

地域包括支援センターへの相談

老老介護や認認介護への対策の1つとして、地域包括支援センターへの相談があります。

地域包括支援センターは全国の5,404箇所に設置されており、地域包括ケアシステムの中で地域包括ケアを実現するための中核機関として位置づけられ、住民の相談を幅広く受け付け制度を横断して支援を実施することができます。

老老介護や認認介護は介護・医療サービスの提供だけでは解決できないことも多いため、さまざまな専門機関と連携して課題解決をサポートする地域包括支援センターへの相談は的を射ていると言えるでしょう。

参考:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

まとめ

両手のひらの中にハート
介護の未来には介護費用の増加、人手不足、介護難民の増加など解決するのが難しい課題がたくさん待ち受けていますが、現在国や地域、専門職種の人たちがさまざまな形で連携して解決策を模索していると言えるでしょう。

この記事も参考にして、ぜひ介護業界の将来が明るいものとなるよう、できることから始めてみてください。
#介護の未来 #介護人手不足 #介護業界課題
※掲載情報は公開日あるいは2023年05月31日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。
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