ケアマネジャーが意識したい家族との関わりとは?事例から詳しく解説

良い家族との関わりを持っている女性ケアマネジャー
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ケアマネジャーが家族支援のために知っておきたい利用者家族が抱えやすい課題とは?

ケアマネジャーの業務をするにあたって、家族支援の視点が必要な事例が増加してきています。
もし家族支援の視点を持たずにいると、時間の経過とともに発生しやすくなる課題を3つご紹介します。

介護離職

介護離職とは家族の介護のために仕事を辞めてしまうことです。
2021年に厚生労働省が発表した「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」において、介護離職をした人945人を対象に手助・介護のために仕事を辞めた理由についてたずねた所、次のような結果が出ました。

回答

割合

(仕事を続けたかったが、)勤務先の両立支援制度の問題や介護休業などを取得しづらい雰囲気などがあった 【勤務先の問題】

43.4%

(仕事を続けたかったが、)介護保険サービスや障害福祉サービス等が利用できなかったり利用方法がわからなかったりした【サービスの問題】

30.2%

(仕事を続けたかったが、)手助・介護が必要な家族、 その他家族・親族の希望などがあった 【家族・親族等の希望】

20.6%

自分の希望(仕事を続けたくなかった)

22.0%

その他

3.3%

介護保険サービスの利用方法がわからなかった人が30.2%いることから、この課題にケアマネジャーが気づくことができれば、家族支援として介護保険制度の説明などを行い介護離職を減らせる可能性があると言えるでしょう。

ヤングケアラー

ヤングケアラーとは、本来は大人がする家事や家族の世話を日常的にしている子供のことを指します。
2022年に株式会社日本総合研究所が発表した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」で、小学生のヤングケアラーと思われる子供の状況についてたずねた所、次のような結果が出ました。

回答

割合

障がいや病気のある家族に代わり家事をしている

19.1 %

家族の代わりに、幼いきょうだいの世話をしている

79.8%

家族の代わりに、障がいや病気のあるきょうだいの世話をしている

7.9%

目を離せない家族の見守りや声掛けをしている

9.0%

家族の通訳をしている(日本語や手話など)

22.5%

アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族に対応している

3.4%

病気の家族の看病をしている

6.7%

障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている

4.5%

障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている

1.1%

その他

3.4%

直接介護に携わるといった形ではなくても、幼いきょうだいの世話など小学生には荷が重いことを日常的にしているのがわかります。
介護保険サービスの中で利用者家族に関わるケアマネジャーが最初に地域のヤングケアラーの存在に気づくのは難しいことですが、家族との関わりを持つ上でヤングケアラーの概念を正しく理解し、サポートの必要性について理解を深めておくのが望ましいでしょう。

高齢者虐待

厚生労働省では高齢者虐待禁止法に基づき高齢者虐待への対応状況を毎年公表していますが、2022年の調査結果は次のようになりました。

分類

件数

養介護施設従事者などによる高齢者虐待の相談・通報件数

2,795件(前年比405件増)

養介護施設従事者などによる高齢者虐待の虐待判断件数

856件(前年比117件増)

養護者による高齢者虐待の相談・通報件数

38,291件(前年比5.3%増)

養護者による高齢者虐待の虐待判断件数

16,669件(前年比1.5%増)

残念ながら相談・通報件数、虐待判断件数とも前年度より増加しているため、増加を食い止めるためにもケアマネジャーが家族との関わりを持つ上で様子観察を行い、虐待の兆候がないかを見極めていくのが大切です。

ケアマネジャーとしての家族との関わり方がわかる事例

世田谷区が公表している「ケアマネジメント困難事例集」と愛知県が公表している「愛知介護支援専門員医療連携・支援困難事例集」の中から、ケアマネジャーとしての家族との関わり方がわかる事例を3つご紹介します。

家族への支援が必要な事例

家族1人1人それぞれに支援が必要な事例の内容は次の通りです。

利用者の状態

利用者の意向

家族の状態

ケアマネジャーの対応

  • 80才の女性
  • 要介護2
  • 右大腿部頸部骨折、脊椎圧迫骨折、高血圧
  • つかまって立位歩行がやっとできる
  • 夫の年金で生活
  • 介護保険サービスを増やしたい
  • 夫、利用者、長男、長女の4人暮らし
  • 夫は要介護2だが介護保険サービスを受けていない
  • 長女は知的障がい
  • 長男は精神障がい
  • 戸建住宅に住む
  • 長男による利用者への虐待の疑いあり
  • 長男の苦しさも理解しながら対応する
  • 利用者の生命に危険があると判断したら長男と距離を置くこととする
  • 家族全員参加でどのような方向性の支援をするか話し合う
  • 家族それぞれの支援者が連携してサポートする
家族全員が要介護状態や障がいがあり、何らかのサポートを必要とする状態なので、家族支援が必要な状態だと考えられます。
しかし課題が複数ある状態のため、優先順位を決め支援の方針をチームでぶらさないことが大切です。
高齢者虐待の疑いがあるものの、なぜ長男がそのような行為に至ったのかを理解しようと努めながら、それぞれの支援者が連携して家族支援をした好事例だと言えるでしょう。

家族間のトラブルがありサービスを提供しにくい事例

夫婦の仲が良くなく介護サービスを提供しにくい事例をご紹介します。

利用者の状態

利用者の意向

家族の状態

ケアマネジャーの対応

  • 76才の男性
  • 要介護3
  • 動脈硬化、肺気腫
  • 心筋梗塞、高血圧、脳梗塞
  • 室内歩行可能、会話可能
  • 厚生年金で生活
  • 介護保険サービスを利用して生活を維持したい
  • 69才の妻との2人暮らし
  • 妻に認知症の疑いあり
  • 妻は介護保険サービスを利用したくない
  • 戸建住宅に住む
  • ケアマネジャーが訪問すると夫婦がいつも怒鳴り合いのけんかになり話をするのが難しい
  • 家族の話し合いでキーパーソンを決めてもらい、キーパーソンとなった長男と連絡して介護保険サービスを受けてもらうようにする
  • サービスのない時も訪問は続け妻に顔を覚えてもらう
  • 家族関係の調整だけに目を向けず、本人の必要な介護サービスを提供する

訪問のたびに怒鳴り合いの喧嘩をしている状態の場合、つい家族の人間関係の調整だけに意識を向けがちですが、この事例では利用者の意向である介護保険サービスを利用して生活を維持したいという目標に向けてケアマネジャーが行動しています。
そのため最終的には長男の協力が得られ、利用者の意向をかなえた好事例だと言えるでしょう。

主介護者に介護力がなく家族支援が必要な事例

主たる介護者の介護力がなく、ケアマネジャーの家族支援が必要とされた事例の内容は次の通りです。

利用者の状態

利用者の意向

家族の状態

ケアマネジャーの対応

  • 81才の女性
  • 要介護5
  • 肺結核、肺動脈血栓塞栓症、認知症
  • 寝たきり
  • 年金、特別障がい者手当、長男からの援助で生活
  • 家で生活をしたい
  • 無職の次男と同居
  • 家庭内で必要とする介護ができていない
  • お金がなく受診もできていない
  • 依頼当日に病院に訪問し医療面でのサポートの方向性をつかむ
  • 以前から関わりのある地域包括支援センターから情報収集し次男への対策を考える
  • 次男は介護保険サービスの利用を拒否しがちだが訪問看護と訪問入浴を継続
次男に介護力、経済力がない状態であるにも関わらず利用者の主介護者になってしまったという状態なので、次男との信頼関係を構築して介護保険サービスをいくつか受け入れてもらい、利用者の意向をかなえた好事例です。

ケアマネジャーが家族からクレームを受けた事例

世田谷区が公表している「ケアマネジメント困難事例集」と愛知県が公表している「愛知介護支援専門員医療連携・支援困難事例集」の中から、家族支援をする上でケアマネジャーが家族からクレームを受けた事例を3つご紹介します。

家族の意向として要求水準が高い事例

家族の意向として介護保険サービスに対する要求水準が高く、クレームになっていた事例の内容は次の通りです。

利用者の状態

利用者の意向

家族の状態

ケアマネジャーの対応

  • 82才の女性
  • 要介護4
  • アルツハイマー型認知症、頸椎症性脊髄症、高血圧、狭心症、十二指腸潰瘍
  • 起き上がり、座位、トイレは可能
  • 厚生年金で生活
  • 介護保険サービスの利用と娘の介護で自宅で暮らしたい
  • 一人娘と2人暮らし
  • 戸建住宅に住む
  • 娘はフルタイム勤務で働きながら介護をしているためコミュニケーションが取りにくい
  • 事業者に自分と同じやり方を求める
  • 娘の勤務都合でのスケジュール変更が多い
  • ケアマネジャーの交代が多く娘との信頼関係が構築できていなかったためまず信頼関係を作る
  • 介護保険制度への理解が浅く娘の要求水準が上がっていたためサービスについての質問に回答をして理解してもらう
  • 母親の介護に一生懸命な娘の気持ちを理解する
なぜ介護保険サービスに対し要求水準が高いのかをコミュニケーションの中でケアマネジャーが発見し、対応に活かしたことでスムーズなサービス利用につながった好事例だと言えるでしょう。

家族とコミュニケーションが取れず不満につながる事例

家族とのコミュニケーションが取れず、クレームにつながっていた事例は次の通りです。

利用者の状態

利用者の意向

家族の状態

ケアマネジャーの対応

  • 80才の女性
  • 要介護3
  • 大腸がん、腸閉塞(ストマ利用者)
  • 歩行器使用
  • 娘の収入で生活
  • 介護保険サービスを利用して自宅で生活したい
  • 娘の家族と3人暮らし
  • 集合住宅に住む
  • 娘とコミュニケーションが取りにくい
  • 娘はこだわりが強く制度に不満がある
  • 負担金の未納など事業者とトラブルを引き起こしている
  • 娘とのコミュニケーションとは別に利用者の意向をかなえるサービスを提案する
  • ストマ対応ができる事業所が少ないことへの理解をしてもらえず困るが娘の心情にも共感を示す
  • ADLが回復傾向に向かったのでサービス内容を見極める
家族とコミュニケーションがうまく取れていないことと、利用者の意向を切り離して考えたことで必要なサービスを提供でき、ADLの回復につながった好事例です。

要望と苦情の数が多い事例

家族からの要望が多く、苦情につながっていた事例は次の通りです。

利用者の状態

利用者の意向

家族の状態

ケアマネジャーの対応

  • 72才男性
  • 要介護5
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)、糖尿病
  • 寝たきり
  • 気管切開で会話ができないため不明
  • 本人、妻、長男の3人暮らし
  • 前の事業所で支援困難となり引継ぎ
  • 主介護者の妻から介護事業所、ヘルパー、訪問看護事業所にクレームあり
  • 妻の希望が本人の意思を尊重してほしいという内容だったためそれに沿うよう対応
  • 関係者と情報共有をしながら対応
  • 地域包括支援センターとも連携し無理な要求は断る
関係者と情報共有しながら本人や妻の感情に共感的な理解を示して信頼関係を作りつつ、無理な要望には毅然とした対応を行った好事例と言えるでしょう。

ケアマネジャーができる家族支援とは

ケアマネジャーができる家族支援にはどのようなことがあるのでしょうか。
前の項目でご紹介した事例の内容も踏まえて5つご紹介します。

信頼関係を構築する

相手との信頼関係が構築された状態を心理学の用語でラポール形成と呼びますが、家族支援をするにはまず家族との間にラポール形成をするよう努めなければ、どれだけケアマネジャーが家族支援をしようとしても受け入れてもらえません。
家族の感情に共感を示し、サービスのない時も訪問だけは続けて関係を維持するといった行動が少しずつラポール形成につながっていきます。

広く情報収集する

ケアマネジャーは、今まで利用者やその家族と関わりを持った事業所や地域包括支援センターなどからも広く情報収集し、客観的な事実を基に家族支援の方向性を定めるのが望ましいでしょう。
自分の手元にある情報だけで判断するのではなく、さまざまな専門職が収集した情報を分析し、とりまとめて判断するのが大切です。

介護保険制度への理解を求める

家族1人1人の介護保険制度への理解が浅いのが原因で、家族支援が進みにくい場合があります。
介護保険制度を利用しているからといって、家族が介護保険の詳細な内容まで理解しているとはかぎらないのを覚えておきましょう。

専門職が連携して制度をまたいだ支援ができないか考える

介護職の対応だけでは家族の抱える課題が解決できず、看護、リハビリ、地域包括支援センターなど専門職として関わる人たちが連携して支援を行う方が望ましい場合があります。
時には医療サービス、介護保険外サービスなど、介護保険制度以外のサービスを利用して家族の支援ができないかを考えてみましょう。

利用者本人の課題と家族の課題をわけて考える

自分の課題と他人の課題をわけて考えることを心理学の用語で「課題の分離」と言いますが、利用者本人と家族の課題を切り分けて考え、対応するのも大切です。
わかりにくければまず家族それぞれの抱える課題は何かを書き出してみて、それぞれの課題に対して個別に家族支援ができないか考えてみましょう。

まとめ

ケアマネジャーとして適切に家族との関わりを持つには、信頼関係を構築した上で利用者の課題と家族の課題をわけて考え、それぞれを関係者と連携して解決する姿勢が重要です。
この記事も参考にして、ケアマネジャーとしてどのように家族との関わりを持つのが望ましいのかを一度考えてみてください。

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