『EPA介護福祉士候補者』とは!?|介護職の国際化は始まっている

公開日:2020年05月25日

更新日:2020年07月27日

『EPA介護福祉士候補者』について解説します!

EPA介護福祉士候補者という言葉を知っていますか?
介護職の方でも「初めて聞いた」という方は多いのではないでしょうか。
今後の活躍が期待されている「EPA介護福祉士候補者」について説明していきたいと思います。

EPA介護福祉士候補者とは?

EPA介護福祉士候補者とは?

EPA介護福祉士候補者とは、経済連携協定(EPA)に基づいて日本の介護施設で働き研修をおこないながら、日本の介護福祉士資格を取得することを目的に来日した外国人のことです。EPA介護福祉士候補者の対象国は、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国となっています。
候補者のあっせんなどの業務は、日本の唯一の受入れ調整機関である公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)が行っています。
 
EPA介護福祉士候補者を受け入れる目的は「日本の介護施設で就労・研修をしながら、日本の介護福祉士資格の取得を目指してもらうこと」(※)となっており、労働力不足を補うことが目的ではないとされています。
平成20年度にインドネシアからの受入れが始まり、翌年の平成21年度にはフィリピンからの受け入れが始まりました。そして、平成26年度に3か国目のベトナムからの受け入れが開始されています。
 
近年、介護現場で外国人の介護スタッフが増加している理由は、このシステムを利用し介護福祉士になった方や候補者達が勤務しているからです。
 
(※)厚生労働省|EPA介護福祉士候補者の受入れについて  

◇「介護福祉士」について詳しく知りたい方はこちらのページをご覧下さい。
「簡単解説!介護福祉士とはどんな資格?」

EPAとは?

EPAとは「Economic Partnership Agreement」の略称で、日本語では「経済連携協定」のことをいいます。
特定の国や地域同士での貿易や投資、知的財産の保護、競争政策など、経済領域での連携強化や協力の促進をするため、おもに以下の内容を約束する「条約」です。

【EPAに含まれる約束の例】
1)「輸出入にかかる関税」を撤廃・削減する
2)「サービス業を行う際の規制」を緩和・撤廃する
3)「投資環境の整備」をおこなう
4)「ビジネス環境の整備」を協議する

「EPA介護福祉士候補者」になるのは簡単ではない?!

EPA介護福祉士候補者は簡単にはなれない?~国によって異なる要件について~

EPA介護福祉士候補者は、希望したからといってなれるものではありません。
日本の介護施設で働きながら介護福祉士の資格取得を目指すため、それなりの経歴や資格、日本語の能力などが必要となります。
EPA介護福祉士候補者として選ばれるためには、それぞれの国によって定められた要件を満たすことが必要です。

国によって異なる資格取得の要件

各国のEPA介護福祉士候補者資格の取得要件は以下です。

インドネシア

インドネシアの要件は以下です。

●次の(1)から(3)までのいずれかの条件に該当する者であること。
(1)インドネシア国内にある看護学校の修了証書Ⅲ以上取得者
(2)インドネシア国内にある大学の看護学部卒業者(4年生大学卒)
(3)インドネシア国内にある(1)・(2) 以外の大学又は高等教育機関から修了証書Ⅲ以上の学位を取得し、かつインドネシア政府により介護士として認定された者
●訪日前日本語研修(6カ月)受講後に日本語能力試験N4程度以上に達していること。
●訪日後、日本語研修(6カ月)を修了していること。
●訪日後、介護導入研修(6カ月)を修了していること。

※日本語研修の免除について:日本語能力試験 N2 以上を取得していることが確認された者は、訪日前後の日本語研修を受講しなくても要件を満たしているものとする。

フィリピン

フィリピンの要件は以下です。

●次の(1)又は(2)のいずれかに該当する者であること。
(1)フィリピン国内にある看護学校卒業している者
(2)フィリピン国内にある高等教育機関から学位号を取得(4年生大学卒)し、かつフィリピン政府により介護士認定(TESDAの認定保持)された者
●訪日前日本語研修(6カ月)受講後に日本語能力試験N5又は N4 程度以上に達していること。
●訪日後、日本語研修(6カ月)を修了していること。
●訪日後、介護導入研修(6カ月)を修了していること。
 

※日本語研修の免除について:日本語能力試験 N2 以上を取得していることが確認された者は、訪日前後の日本語研修を受講しなくても要件を満たしているものとします。

ベトナム

ベトナムの要件は以下です。

●ベトナム国内における 3 年制又は 4 年制の看護課程を修了している者。
●訪日前日本語研修(12カ月)受講後に日本語能力試験 N3 以上に合格していること。
●訪日後、日本語研修(2.5カ月)を修了していること。
●訪日後、介護導入研修(2.5カ月)を修了していること。

 
※日本語研修の免除について:日本語能力試験 N2 以上を取得していることが確認された者は、ベトナム人候補者については、訪日前の日本語研修を受講しなくても要件を満たしているものとします。

EPA介護福祉士候補者はどこで働くの?

EPA介護福祉士候補者が働く場所は?

EPA介護福祉士候補者はどこの施設でも働けるわけではありません。紹介された受け入れ施設で3年間勤務し、実務経験を積みながら介護福祉士資格の受験に向けて勉強をします。
EPA介護福祉士候補者を受け入れる介護施設には要件が設けられており、すべての要件を満たしていなければなりません。
おもな要件は次のとおりです。

1)定員30名以上の介護施設であること
2)介護職員数が法令に基づく配置基準を満たしている(候補者を除く)
3)常勤介護職員の4割以上が介護福祉士の資格を持つ職員であること
4)候補者に対して日本人と同等以上の報酬を支払うこと
5)適切な研修体制を確保すること
6)候補者の宿泊施設を用意すること
7)介護福祉士候補者の帰国費用の確保など、帰国担保措置を講じることができる など

このように、受け入れる介護施設側は候補者が日本人の介護職員と比べて不利にならないよう配慮する必要があります。
なぜこのような要件を設けているのかというと、候補者の受け入れ先介護施設がブラック企業のような施設では、国としての面目が立たないからです。
受け入れの目的が「労働力」とならないようにするため、人員に余裕のある大手の介護施設しか受け入れができないように「定員30名以上の介護施設」などの要件が含まれています。
 
EPA介護福祉士候補者が働いている施設の例が以下です。

【EPA介護福祉士候補者の受け入れ施設(施設類型別)】
〇特別養護老人ホーム
〇介護老人保健施設
〇介護老人福祉施設
〇介護療養型医療施設
〇障がい者施設
〇デイサービス など

※詳しい要件などについては下記にてご確認ください。
「EPA 介護福祉士候補者受入れ機関・施設の要件」

EPA介護福祉士候補者の受験について

EPA介護福祉士候補者の受験について

介護福祉士資格の取得を目指す候補者にとって、受験は今後も日本で働くことができるかどうかの分かれ道です。
EPA介護福祉士候補者は、日本人と同じ内容の試験を受けることになります。ただし、EPA介護福祉士候補者には以下の特例が設けられています。

〇筆記の試験時間(220分)が1.5倍に延長
〇難解な漢字へのふりがなが付記された問題用紙の配布

(疾病名への英語の併記、国際的な略語などの英語の付記、外国人名への原語の併記 など)
 

試験問題の読みが難しいという指摘があったことから、外国人受験者に対する配慮が施されるようになりました。しかし、筆記試験の内容については日本人と同様のため、国籍による試験結果の差はありません。
試験時間の違いや問題用紙にふりがななどがあるとしても、日本人と同じように日本語で試験を受けていることを考えると、EPA介護福祉士候補者の努力が伺えます。
介護福祉士資格の取得は、候補者達にとって決して簡単に取得できる資格ではないといえるでしょう。

EPA介護福祉士候補者は「実技試験対策」が必要になる

 EPA介護福祉士候補者は実技試験を受けなければなりません。
日本人と同じように「介護技術講習会」または「実務者研修」を受講・修了すれば、実技試験の免除を受けることは可能です。
しかしながら、他国で働きながら時間・お金が必要となる介護技術講習会や実務者研修を受講し修了することは、膨大な労力がかかるため現実的ではありません。そのため、EPA介護福祉士候補者は実技試験を受けることが一般的です。
 
実技試験は「与えられた課題を5分以内で実施する」というもの。
詳しい試験内容までは公開されておらず、どのような実技が求められるかは当日まで分かりません。実技試験では、制限時間を守って危険行為をしない限り合格できるといわれており、合格基準は課題の総得点の60%とされています。
日本では、実務者研修の修了が義務化されたため実技試験を意識しない方が多ですが、EPA介護福祉士候補者の場合は実技試験対策が必要です。

国家試験の合否によってはすぐ帰国?!

EPA介護福祉士候補者は、介護福祉士の国家試験を受験し「合格」すると上限なく在留資格を更新できるようになり、介護福祉士として働き続けることが可能になります。
一方で、不合格の場合は帰国しなければなりません。
しかし、一定の条件を満たす候補者は1年間の滞在延長が認められ再受験ですることが可能です。また、介護施設にて引き続き働くこともできます。
 
これまで、2度目の受験に不合格だった場合は帰国することが条件で、再度国家試験を受験するためには「短期滞在」の在留資格を得て再度入国しなければなりませんでした。
しかし、2019年4月に厚生労働省が「EPA(経済連携協定)に基づいて来日し、施設などで4年間介護サービスに従事した経験を持つ外国人については、無試験で「特定技能1号」の在留資格に移行できる」と発表。
この決まりによって、特定技能1号に在留資格を移行するとさらに最長で5年の在留期間が延長となり、介護施設などで働きながら国家試験に挑戦することが可能です。
 
特定技能1号に在留資格を移行するには、以下の要件を満たす必要があります。

●直近の介護福祉士国家試験の結果通知書により
●合格基準点の5割以上の特典であること
●すべての試験科目で得点があること

「特定技能1号」での在留期間中(最長5年)に介護福祉士の国家試験に合格した場合は、在留資格を「介護」に移行でき、在留期間の更新は回数制限が無くなります。

合格率はどのくらい?

EPA介護福祉士候補者の合格率についてみていきましょう。
以下表は、厚生労働省が公表している平成30年度と令和元年度のEPA介護福祉士候補者試験結果です。※

【 EPA介護福祉士候補者試験結果 】
平成30年度  令和元年度
受験者数 合格者数合格率受験者数合格者数 合格率
インドネシア2367833.1%293 107 36.5%
フィリピン2369540.3%3139229.4%
ベトナム106 9387.7%15213890.8%
全体57826646.0%75833744.5%

令和元年度の経済連携協定(EPA)に基づく外国人介護福祉士候補者の合格者は337名で、合格率は44.5%と、前年度よりもやや低い結果に。3か国のなかでも、ベトナムは群を抜いた合格率の高さです。
ちなみに介護福祉士資格の全受験者数は、8万4,032人、そのうち合格者数は5万8,745人で合格率は69.9 %でした。
日本語で受験していることを考えると、合格率は高めであるといえます。
 
※参考:第32回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の試験結

EPA介護福祉士候補者」のこれから

EPA介護福祉士候補者のこれから

 日本で働いているEPA介護福祉士候補者が現在どのくらいいるのかを調べてみました。
一般社団法人外国人看護師・介護福祉士支援協議会が2018年に行った実態調査によると、現在日本で働いているEPA介護福祉士候補者のうち、最も多い出身国は38.2%を占めるフィリピンです。僅差のインドネシアは35.5%、ベトナムは26.5%を占めています。
候補者の受け入れ先は、特別養護老人ホームが64.6%と最も多く、次いで老人保健施設は24.4%となっています。この2種類の施設だけで全体の約90%の候補者を受け入れているのが現状です。
 
そもそもEPA介護福祉士候補者は日本の介護現場における人材不足を補うものではないとされています。
しかしながら高齢化が進むいま、介護士が不足している日本において、外国人介護士は今後さらに必要となる人材です。そのため、外国人介護士に引き続き日本で働いてもえる環境整備をすることが必要だといわれています。
また、2019年の「特定技能1号」への移行が可能になったことで、今後さらに介護福祉士の資格取得者数の増加が予想されるとともに、日本での長期的な活躍に期待されています。

あなたにあなたにピッタリの求人をご紹介! 求人を紹介してもらう