更新日:2023年04月13日
公開日:2021年03月03日
介護職は「感情労働」といわれることがあります。
この感情労働とは一体どのような意味で使われる言葉なのでしょうか?
本コラムでは、感情労働とは何か、また感情労働がもたらす影響や対処法について解説しています。
感情労働とは表情や声や態度において、喜怒哀楽の感情をコントロールして職務にあたることをいいます。
一般的に体を使って行う仕事を肉体労働、頭を使って行う仕事を頭脳労働といいますが、それらに加えて、感情を管理して行う仕事が感情労働です。
社会学者のA・R・ホックシールド氏によって提唱されました。
ホックシールド理論では、感情労働の職種として航空機の客室乗務員(CA)が挙げられています。
客室乗務員の仕事はどの乗客に対しても常に笑顔で接し、丁寧なおもてなしをすることが求められるためです。
どんな時でも自身の怒りや哀しみなどの感情を出さずに、ホスピタリティを持って顧客にサービスを提供しなければなりません。
もちろん、客室乗務員以外でも感情労働に従事する人たちがいます。
代表的な職種に
・介護従事者
・医療従事者
・教師
・販売員
・コールセンターやカスタマーセンターの従業員
・クレーム処理担当者
などが挙げられるでしょう。
また肉体労働や頭脳労働といわれる仕事でも、上司やクライアントとの関わりのなかで感情労働を強いられる場面があったりと、現代社会ではさまざまな職業において感情労働が増えてきています。
感情労働は、精神的な負荷が大きいという点が特徴です。
介護職の場合、利用者やそのご家族から理不尽な要求をされたり屈辱的な言動をとられたりしても、感情を抑えて対応することが求められます。
自身の感情を抑制しなければならないことへのストレス、重圧、ジレンマを多くの介護職員が抱えています。
抑圧され、精神的な負荷を抱えた状態で感情労働を続けることによって、人によっては心身に支障をきたすなどの悪影響を受けることがあるので注意が必要です。
具体的には、次のような症状があります。
肉体的・精神的苦痛やストレスなどによって、心身のエネルギーが燃え尽きて無くなってしまう状態をバーンアウト(燃え尽き症候群)といいます。
バーンアウトは、真面目で完璧主義の人がなりやすいといわれています。
また、過重労働や精神的ストレスも大きな要因となります。
これまで真面目に仕事に取り組んできたのに、
・急に仕事への意欲を喪失してしまった
・疲れ果てて気力がわかない
・仕事を辞めたいと思い始める
などの症状が現れた場合にはバーンアウトの可能性があります。
◆バーンアウト(燃えつき症候群)について詳しくはこちら
チェック表あり!介護職における燃え尽き症候群(バーンアウト)とは?
感情労働によるストレスから気分が落ち込みやすくなる、眠れない、食欲がないなどの身体的症状が現れることがあります。バーンアウトとも類似しています。
一時的に憂鬱な気分になったり、不安感が生じたりすることは誰にでも起こりますが、原因がよくわからずにそういった症状がずっと続くようであればうつ病を引き起こしているのかもしれません。
感情労働は、アルコール依存症、ギャンブル依存症、買い物依存症などの引き金となる場合があります。
感情を抑圧していたストレスが、一気に放出しこのような衝動を引き起こします。
この他にも暴力的になったり、ストレスが原因による体調不良、重篤な病気を引き起こす恐れもあります。
心身の不調を感じた場合には決して無理せず、「休暇をとる」「病院で診てもらう」など、放置しないようにしましょう。
できることならば、上記のような症状が出る前に何かしらの対策をとるべきでしょう。
ストレスをそのまま放置して、ため込まないことが大切です。
感情労働に従事する人は、仕事で生じる負荷が仕事以外の時間にも影響しないように、仕事とプライベートを切り分けましょう。
オンとオフの区別をつけ、仕事は仕事と割り切ることが大切です。
やり残した業務や仕事中に起こった嫌な出来事など、仕事のことをあれこれとプライベートの時間に考えても解決できることは少なく、暗い気持ちだけが残ることも多いと思います。
気持ちの切り替えは難しいかもしれませんが、就業時間以外はできるだけ「仕事のことは考えない、持ち込まない」を心がけてみてください。
時間を忘れて没頭できることや趣味などで、ストレスを解消しましょう。
先ほどのオンオフの区別する話にも通じますが、仕事以外のことに意識を向けることが大切です。
料理をする、映画を観る、外食する、運動する・・・など、何でも構いません。
好きなことややりたいことで気晴らしをし、楽しく充実した時間を増やしていきましょう。
そしてリラックスすることも効果的です。
お部屋やよく過ごす場所を、心身を休めることができる居心地のよい空間にすることをおすすめします。
癒し効果のある音楽や香り、マッサージなどもぜひ取り入れてみてください。
食欲がない、なかなか眠れない、毎日疲れ切っている、自然に涙が出てくる・・・などの症状はありませんか?
そういったことが続くようであれば、それは不調のサインかもしれません。
放っておくと心身の病気を患ってしまう可能性もあります。
何かおかしいと感じたときは、決して無理して仕事を続けないようにしましょう。
可能であれば上司や同僚に相談する、休暇(休息)をとるなどをおすすめします。
いずれにせよ、不調を無視しないということが大切です。
また、その日の疲れを残さず、翌日リフレッシュした気持ちで仕事に取り組めるように睡眠はしっかりととりましょう。
夜になると悩み事や考え事をしてしまうという方も多いかもしれませんが、考えているうちに雪だるま式に膨れ上がり大きな不安になってしまうこともあります。
悩みや不安が大きい時は、考え込まずに眠ることが一番です。
ではここからは法人側がとるべき対策をお伝えします。
事業者や管理職に就いている方は、常に現場の状況を把握するようにしましょう。
感情労働によるストレスは個人の問題ではなく、法人全体の問題としてとらえて職員のメンタルケア対策を行っていくことが重要です。
ストレスチェック制度というものがあります。
従業員が質問項目に回答して自身のストレス状態を把握することで、メンタルヘルスの不調を未然に予防するというものです。
50人以上の従業員がいる事業所では年に1回ストレスチェックを実施することが義務付けられていますが、従業員50人以下の事業所でもストレスチェックを実施することは可能です。
制度を導入するには準備や費用もかかりますが、職員のメンタルヘルスケアのために実施することが望ましいでしょう。
ストレスチェック制度導入の助成金もありますので、ぜひ活用してください。
◆ストレスチェックについて詳しくはこちら
介護職員が知っておきたい!ストレスチェックで悪化を回避!
仕事でハラスメント被害を受けたり悩みを抱えたりしたときの相談窓口を設置し、業務上の悩みや不満、不安を気兼ねなく相談できる場を作りましょう。
事業所や法人単位で担当者を決めて相談対応にあたる、もしくはメンタルヘルスを専門に扱う外部の企業に委託する方法などがあります。
職員のストレスを見逃さず、早期にケアできる仕組みを作ることが大切です。
職員同士でのコミュニケーションの機会を積極的に増やし、意見や悩みを打ち明けやすい環境づくりをしていきましょう。
誰かに話すことでストレスが軽くなることもあります。
職員が1人でストレスを抱え込んでしまわないように、管理職の方はできるだけ話を聴く時間を作ることを心がけてください。定期的に面談の機会を設けるなどもおすすめです。
職員一人ひとりの変化に気づけるように、日頃から積極的にコミュニケーションをとることが大切です。
職員の不調に気づいた場合には、無理に労働を強いることなく休暇を与えるなどの対応をとることをおすすめします。
真面目で責任感の強い職員ほど、無理して頑張ろうとしてしまうものです。
本人の意思を尊重することももちろん大事ですが、明らかに心身に不調をきたしていると感じる場合には、深刻な状況に陥る前に長期休暇を与えるといった対応も必要となるでしょう。
職員のモチベーション維持も重要です。
明確な人事評価制度を導入するなど、職員の努力や成果が報われる仕組みを作ることもメンタルヘルスケアの一つの方法といえるでしょう。
頑張り次第で給料が上がる、役職が与えられるといった明確な指標を設計することで、職員のバーンアウトを防ぎ、モチベーションや生産性の向上につなげられる可能性があります。
感情労働について、またその対処法についてお伝えしました。
介護従事者は感情労働による負荷で心身の不調を招かないように、ストレス解消法を用意しておくことが大切です。
また法人はメンタルヘルスケアに力を入れ、職員の健康を守ることが重要になります。
まずは職場全体でストレスやメンタルヘルスケアに関する理解を深める場を設け、ストレスの予防法や対処法を知ることから始めるのもよいでしょう。
職員一人ひとりがやりがいを持っていきいきと働けるような環境を皆で作っていけるとよいですね。
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