フレイルとは何か?簡単にわかりやすく解説します

更新日:2023年04月07日

公開日:2021年06月24日

要介護の一歩手前!?フレイルとは何か?

介護が必要となる前段階の状態を指す「フレイル」というもの皆さんはご存知でしょうか?

2020年からのコロナ禍によって、高齢者のフレイルは増加傾向にあるようです。

本コラムでは、
・フレイルとはどういう状態を指すのか
・原因は何なのか
・予防するにはどうすればいいのか

といったことをわかりやすく簡単に解説していきます。

介護職員の皆さんや、ご家族の介護予防をしていきたいとお考えの方はぜひ参考にしてください。

フレイルとは何か

フレイルの概念図

フレイルとは健康と要介護・寝たきりの間を指し、簡単にいうと「加齢によって心身が老い衰え、社会とのつながりが減少した状態」のことです。
「Frailty(虚弱)」が語源となっており、2014年に日本老年医学会によって提唱されました。

要支援・要介護の前段階の状態であるフレイルは、単なる身体的機能の衰えだけではなく、精神的脆弱や社会性低下なども生じることが特徴です。

改善をせずにそのまま放置すると介護が必要な状態になる可能性が高く、早期発見と適切な予防・改善をしていくことが大切になります。

フレイルを構成する3つの要素

フレイルは大きく3つの要素で構成されます。

<フレイルの要素>
・身体的な衰え
・心理・精神的な衰え
・社会性の衰え

フレイルを構成する3つの要素

身体的な衰え

身体的な衰弱としては、まず筋肉量の低下が挙げられます。
特に、お腹や背中などの体幹筋肉、ふくらはぎなど足の筋肉量の減少が顕著です。
 
筋肉量が減ることで歩きづらくなったり、転倒の危険性が高まります。
免疫力が低下し、血糖値の管理が難しくなるというような問題も出てくるでしょう。

また、オーラルフレイルといって口腔機能の低下も起こります。
食べ物が噛みづらくなったり、食べこぼしなどが増えたりすることが増え、悪化すると嚥下障害や摂食障害に進行します。

心理・精神的な衰え

心理・精神的な衰えとして認知機能の低下があります。

・記憶障害
・失語
・失行
・失認
・遂行機能障害

などが起こる状態です。
いわゆる物忘れや、物の名前がなかなか出てこない、計画立てて物事を進められないといったようなことから始まり、進行すれば認知症と診断されます。

また心理的な衰えの症状として、うつ病を発症する場合もあるので注意が必要です。
初期段階は「ボーッとする」「落ち着きがなくなる」などの変化が見られる場合が多く、認知症とも勘違いされやすい傾向にあります。

社会性の衰え

社会性の衰えというのは、人や社会とのつながりが減っていくことです。

人との会話や交流、社会とのつながりがなくなってしまう事によってもフレイルは進行していき、心身が健康であっても安心とはいえないので注意が必要です。

定年退職や配偶者との死別で一人で過ごす時間が増える高齢者は多くいるでしょう。
また今であれば新型コロナウィルスによって、以前よりも人と会う機会が減っている現状があり、深刻化しています。

健康的に生きる意欲にもつながるため、高齢者の社会性を維持することはとても重要と考えられるでしょう。

フレイルが起こる原因

フレイルを引き起こす2大要因は老化と疾病です。

老化が筋力や口腔機能、認知機能の低下をもたらします。

疾病には色々ありますが、生活習慣病などが代表的です。
高血圧、糖尿病、脳卒中や慢性腎臓病などの治療がうまくいかずにフレイルになると考えられます。

なお2大要因は老化と疾病ですが、老化や病気を引き起こす原因は人によって様々です。
例えば飲酒や喫煙、孤立など多くの問題が関係しているといえるでしょう。

サルコペニア・廃用症候群との違い

ここでフレイルとよく似たものとして挙げられる「サルコペニア」と「廃用症候群」についても触れておきたいと思います。

◆サルコペニア
加齢や病気によって筋肉量が減少し、身体機能が低下していく状態です。
サルコペニアを発症することで転倒や骨折のリスクが高くなり、認知症やうつ病が進行する場合もあります。

サルコペニアもフレイルも機能低下という部分は共通していますが、サルコペニアの場合は筋肉量の減少による身体機能の低下のみを指しています。
それに対してフレイルは、身体機能の低下以外にも認知機能、活動の低下といった幅広い要素を含んでいます。
フレイルの中核症状の一つとしてサルコペニアが含まれると考えられるでしょう。


◆廃用症候群
廃用症候群とは、生活不活発病ともいわれています。

病気やケガなどによって動けない状態が続くことで、身体機能が大幅に低下してしまう状態です。
精神状態にも影響し、うつ病などを引き起こすこともあります。
廃用症候群はフレイルを引き起こす危険因子の一つといえるでしょう。

フレイルの診断方法・チェック項目

どういう状態であればフレイルと診断できるのでしょうか。

フレイルかどうかを判断するには
「健康長寿の3本柱」
・栄養
・運動
・社会参加

のそれぞれに関する項目をチェックしていく必要があります。
指定の評価基準はありませんが、次の日本版CHS基準という評価方法がよく用いられます。

日本版 CHS 基準
項目評価基準
体重減少6カ月で、2~3kg以上の体重減少
筋力低下握力:男性26kg以下
   女性18kg以下
疲労感ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度通常歩行速度が1.0 m/秒以下
身体活動①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?

上記の2つのいずれにも「1週間に1度もしていない」と回答

0項目:健常
1~2項目:プレフレイル
3項目以上:フレイル

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

またもう一点、東京大学高齢社会総合研究機構が開発したイレブンチェックというフレイル診断方法もご紹介します。

イレブンチェック 評価基準
栄養
ほぼ同じ年齢の同性と比較して、健康に気をつけた食事を心がけているはいいいえ
野菜料理と主菜(肉か魚)を両方とも、毎日2回以上は食べているはいいいえ
オーラルフレイル(口腔)
「さきいか」「たくあん」くらいの硬さの食品を、普通に嚙み切れるはいいいえ
お茶や汁物でむせることがあるいいえはい
運動
1回30分以上の汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施しているはいいいえ
日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施しているはいいいえ
ほぼ同じ年齢の同性と比較して、歩く速度が速いと思うはいいいえ
社会参加(社会性・心)
昨年と比べて外出の回数が減ったいいえはい
1日に1回以上は、だれかと一緒に食事しているはいいいえ
自分が活気にあふれていると思うはいいいえ
何よりもまず、もの忘れが気になるいいえはい

「はい」と「いいえ」の箇所が逆(太字)になっている質問が3つありますので、回答の際に注意してください。

右側に6つ以上はチェックがついた場合は要注意、フレイルのリスクが高くなっています。
さらに右の欄のチェックが1つ増えるごとに、フレイルのリスクが2倍増えていきます。

右の欄のほとんどにチェックがつく場合は、1~2年後にはフレイルから要介護になる可能性が高いとされています。

フレイルを予防・改善するには

フレイルを予防・改善するには

上記の診断結果がフレイルであった場合、改善方法はないのかというと決してそんなことはありません。
フレイルは早期発見できれば、生活習慣を改善することで回復することも十分に可能といわれています。

フレイルになる前に予防、フレイルになった初期段階(プレフレイル)で気づいて改善していく事が大切です。
先述した「健康長寿の3本柱」である
・栄養
・運動
・社会参加
それぞれにおいて、気をつけるべきことを見ていきましょう。

◆運動

ウォーキングや体操などの有酸素運動を取り入れましょう。
しっかりと体を動かし、歩くことで筋肉を鍛えます。
庭の手入れや家事などでこまめに動くこともよいでしょう。

足腰を鍛えることで血流もよくなります。血行促進は認知機能の低下予防にも効果的です。
歩幅を広げて早足で歩くことがポイントです。

しかし運動がよいからといって、いきなり走ったり激しい筋トレをするとケガの危険がありますので注意しましょう。
まずは近所の散歩から始めて、慣れてきたら徐々に運動量を増やしていくことがおすすめです。

◆栄養

フレイル予防にはしっかり食べて栄養をとることが欠かせません。
バランスのよい食事を3食しっかりとりましょう。

特に、炭水化物、タンパク質、ビタミン・ミネラルを意識して摂取すること。
タンパク質は筋肉を作る重要な栄養素です。
さらにエネルギーとなる炭水化物、身体の潤滑油となるビタミン・ミネラルも必須です。

体重が減っていないかをこまめにチェックするようにしましょう。

また栄養をしっかり取るために口の健康を保つことも大切です。
加齢に伴い、だんだんと噛む力が弱くなったり、舌が力強く動かなくなったりと、オーラルフレイル(口腔機能の低下)も進行します。

何もせずに放置すると、食べこぼす、むせる、噛めないような状況になり、食事が困難になっていきます。
舌回し運動やパタカラ体操など、口腔機能運動を取り入れオーラルフレイルを予防しましょう。

◆社会参加

社会参加は特に心の健康につながります。
身体の健康に気を配っていても社会参加がなくフレイルが進行してしまうことはよくあります。

地域の行事やボランティア活動に参加したり、子どもや孫に会う機会を増やすなど積極的に人との交流を増やしていくことです。
これは、家族や周りの人たちが気にかけることでも改善できます。
今は気軽に外出できないような日々ですが、会えない場合にも手紙や電話などで連絡をとりましょう。

また自治体の介護予防の取り組みなどに参加するのもおすすめです。
いずれにせよ、人とのつながりを維持することがとても大切です。

まとめ

フレイルは早期発見によって予防・改善できることがわかりました。

しかし、高齢者が自分自身で気づき、生活改善していけるとは限りません。
実際に健康な頃と変わらぬ暮らしを続け、要介護状態になってしまう高齢者は数多くいます。

フレイル予防には家族や自治体、介護予防サービス職員らのサポートが欠かせません。
近しい人達が適切に介入することで、高齢者のフレイル進行を防ぎ、再び健康な状態で暮らせるよう支援していくことが大切です。

<関連コラム>
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