更新日:2023年03月31日
公開日:2021年08月26日
スクールソーシャルワーカーという職業があります。
子ども達が抱えるさまざまな問題を解決するために、環境面に働きかけていく仕事です。
といっても、具体的にどんなことをするのかイメージしづらいですよね。
本コラムではスクールソーシャルワーカーの役割や仕事内容、なるための方法などをわかりやすく解説していきます。
どんな職業か興味がある方はぜひ参考にして下さい。
スクールソーシャルワーカーは児童が抱えている問題の解決を図るために存在します。
児童の日常生活での悩みや学校でのいじめ、家庭内での虐待といった問題に対して、家族や学校の先生、関係機関と連携を取りながら解決のための支援をするソーシャルワーカーです。
主に学校や教育事務所を拠点に、必要に応じて家庭などを訪問しながら子どもたちをサポートします。
子ども達がいじめや暴力を行う、または被害を受ける背景には、家庭環境や対人関係、心の問題など複合的な要因が考えられ、家族だけ、あるいは学校だけが介入して問題解決を図るのは困難なことです。
そこでスクールソーシャルワーカーの存在が必要とされます。
役割は大きく2つ。
1. 関係機関との連携・調整
2. 児童を取り巻く環境の問題への働きかけ
関係者、関係機関と連携・調整を図りながら、児童を取り巻く状況を改善していくことがスクールソーシャルワーカーの役割です。
日本スクールソーシャルワーク協会においては、スクールソーシャルワーカーの基本姿勢として次のような理念が掲げられています。
・子どもの尊厳の尊重
一人ひとりの子どもを個人として尊重します
・子どもの最善の利益
子どもの利益を第一に考えます
・パートナーシップ
子どもと一緒に問題解決に取り組みます
・ストレングス視点
問題よりも可能性に目を向けます
・エコロジカル視点
環境との相互影響に焦点を当てます
・自己決定
物事を自分で決めるようにサポートします
・連携調整
関係機関や支援者と連携します
・代弁
子どもの気持ちや希望を関係者に伝えます
・秘密保持
不用意に子どもの情報を口外しません
出典:SSWとは|特定非営利活動法人 日本スクールソーシャルワーク協会
スクールソーシャルワーカーと似た職業に「スクールカウンセラー」があります。
「児童の抱える問題を解決するための支援」という点で共通していますが、両者の専門性や役割は異なりますので違いを理解しておきましょう。
スクールソーシャルワーカーは児童が置かれている環境に働きかけて問題の解決を図ります。
対してスクールカウンセラーは、心理的なサポートが中心です。
カウンセリングなどによって児童の精神面をケアし、心の問題の解決を図ることが主業務となり、スクールソーシャルワーカーとは明確に役割が異なります。
両方の職種がそれぞれの役割の中で児童を支援し、相互の協力のもとに問題解決を図ることが求められるでしょう。
スクールソーシャルワーカーが行う仕事は、直接的支援と間接的支援に分けられます。
◆直接的支援
児童が抱える問題を解決するために家庭や学校の環境に働きかけること、生徒や保護者らをさまざまな関係機関とつなぐことなど。
◆間接的支援
支援体制を構築するための研修やアドバイスなどをすること。
具体的には次のような業務を行います。
・問題を抱える児童が置かれた環境への働きかけ
・関係機関とのネットワークの構築、連携・調整
・学校内でのチーム体制の構築、支援
・保護者、教職員らに対する支援・相談・情報提供
・教職員らへの研修活動
児童が抱える問題は、例えば次のようなことが挙げられます。
・経済的格差、貧困
・家庭内での虐待
・いじめ
・暴力行為
・不登校
いじめを受けている、暴力行為をしている、不登校といった問題、また貧困や児童虐待などの家庭内の問題など、さまざまな問題を抱える児童の相談に乗り、情報を集め、児童の家族や友人、学校、さらには関係機関や地域などへ働きかけて状況を改善していくことがスクールソーシャルワーカーの主業務といえるでしょう。
関係機関というのは解決すべき問題によって異なりますが、外部の保健・医療・福祉サービスや団体などのことです。
例えば家庭の貧困や経済的問題に対しては、奨学金制度や就学援助制度のような進学援助に関する制度を紹介したり、貧困世帯を支援するボランティア団体とつないだりといったことを行います。
それぞれの専門機関や支援者らが連携しながら支援できるように、スクールソーシャルワーカーが中心となって情報交換や打ち合わせを行い、ネットワーク構築を図ります。
学校の教職員が実施する校内ケース会議に参加し、具体的にどのような支援が必要かを専門家の視点からコンサルティングします。
また教職員らが普段行っているアセスメントの方法や問題解決の手立てに対して、指導やアドバイスなども積極的に行い、校内でのチーム体制作りの構築・支援に努めます。
児童だけでなく、児童の家族の気持ちに寄り添って相談支援を行うことも重要な業務のひとつです。定期的な家庭訪問や、教職員と保護者間の橋渡しなどを行います。
また教職員・保護者らに対して、児童の課題解決のために活用できる社会資源の情報などを提供します。
児童の問題解決はスクールソーシャルワーカーだけの力でできるものではなく、教職員らによる支援が不可欠です。
教職員らに対して校内研修やPTA研修会などを実施することで、家庭内で起こりうる問題や福祉に関する知識・情報などを共有し、教職員の支援スキル向上に働きかけます。
スクールソーシャルワーカーの主な就業先は、公立の小・中学校、高校、教育委員会、教育事務所などです。
配置方法は自治体によって異なり、配置型、派遣型、巡回型に分かれています。
・配置型
特定の中学校や小学校に配置される。
・派遣型
教育委員会や教育相談センターに所属し、要請があった学校に随時派遣される。
・巡回型
派遣型と配置型の中間型。複数の学校を順番に訪問する。
現状、非常勤として複数の学校を兼務する巡回型が多い傾向にあります。
スクールソーシャルワーカーの配置は全国的に増加しています。
2019年には2,659人が配置され、対応学校数は全国で17,763校という実績でした。
スクールソーシャルワーカーの配置を推進する背景には、義務教育段階の児童の不登校問題があります。
小・中学生の不登校児童は年々増加傾向で、早期支援や相談体制の拡充が必要なことから、文部科学省は2008年より「スクールソーシャルワーカー活用事業」という取り組みを始めました。
現在、全中学校区(約10,000区)に対する配置を目指して活用事業が推進されており、小中学校におけるスクールソーシャルワーカー配置は今後も増えていくでしょう。
スクールソーシャルワーカーは「教育と福祉の両面に関して、専門的な知識・技術を有するとともに、過去に教育や福祉の分野において、活動経験の実績等がある者」が推奨されています。
専門的な知識として求められることは、さまざまな福祉制度の知識やメンタルヘルスへの理解、日本の教育体制や仕組みなど学校教育についての基本知識などです。
専門的な技術として求められることは、児童や保護者らの話を丁寧に聴く力、またその上で解決すべき問題を把握し的確に分析、情報収集などを行うアセスメント能力、関係機関と密に連携・調整を行うためのコミュニケーション力や行動力などが挙げられます。
さらに教育や福祉分野での実績がある者が望ましく、例えば不登校やひきこもり児童への支援経験や教育現場での経験など、児童の福祉に関する支援に従事した経験が推奨されています。
スクールソーシャルワーカーには、専門の資格はありません。
一般的には下記資格のいずれかが必要な職場が多いでしょう。
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・臨床心理士
社会福祉士と精神保健福祉士資格の所有者は、日本ソーシャルワーク教育学校連盟が認定するスクールソーシャルワーク教育課程を修了する必要があります。
また臨床心理士資格の所有者は、指定を受けている保健福祉系の大学院を卒業することが要件です。
これらの資格を有していることが、福祉や教育に関する専門知識があることの証明となります。
なお、公立の学校に正職員(常勤)で勤務する場合には、公務員試験の合格も必須です。
スクールソーシャルワーカーの公式な給与データはありませんので、参考に求人検索エンジンによる情報を見てみますと、月給18万円~23万円の範囲の求人が多数でした。
また雇用形態が非常勤やパートの場合は、時給2000円~5000円程度と金額に幅がありました。
賞与や資格手当ての有無、交通費の支給の有無なども求人によってばらつきがあり、同じ仕事内容であっても職場によって給与額には差があると考えられます。
正確な給与額が知りたいという場合には、ぜひご希望の地域、自治体の求人情報を検索してみてください。
なお求人はハローワークや自治体のホームページなどに掲載されることが多いですが、求人数としてはあまり多くありません。
転職を検討している方は、ぜひ早い段階から求人情報をこまめにチェックされることをおすすめします。
子ども達の安心・安全な暮らしを守り、生活の質(QOL)を向上させるには、それを支える学校や家庭環境を整備していくことが欠かせません。
そのためにスクールソーシャルワーカーの存在があります。
世間的にまだそれほど認知度は高くありませんが、子ども達の不登校、虐待、いじめ、貧困といった問題が増加しているなかで、活躍が期待される職種のひとつといえるでしょう。
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