更新日:2023年03月31日
公開日:2021年08月31日
地域ケア会議とは何かご存知でしょうか?
「参加することになったものの、どのような会議かよくわからない」
という方もいらっしゃるのではないかと思います。
地域ケア会議は地域密着型の医療・介護を推進するために、多職種が集まって課題を検討・解決する会議です。
本コラムでは、地域ケア会議を行う目的や5つの機能、会議の運営についてわかりやすく解説していきます。
ぜひ参考にしてください。
地域ケア会議は、地域包括ケアシステムを実現するための手法の1つとして行われる会議です。
地域包括支援センターまたは市町村が主催し、設置 ・ 運営する「行政職員をはじめ、地域の関係者から構成される会議体」と定義されており、地域の医療・介護に関わる多職種が参加します。
参加者がそれぞれの専門知見を共有しながら、よりよい支援内容について検討し、また地域の課題を明らかにしていくことで、地域包括ケアシステムの整備・推進につなげていきます。
<地域包括ケアシステムとは>
地域包括ケアシステムとはどんな制度?目的や構成要素を簡単に解説します
<地域包括支援センターとは>
地域包括支援センターとは?役割や仕事内容、課題などわかりやすく解説します
地域ケア会議の目的は大きく分けて2つです。
・個別ケースの支援内容を検討する
・地域の実情に応じて生じる課題を検討する
◆個別ケースの支援内容の検討
ケアマネージャーが提出した個別の事例などに対して、多機関・多職種が専門知見から助言などを行うことでよりよい支援、ケアの内容を検討します。
またそれを通して高齢者の実態を把握し、課題解決のために地域包括支援のネットワークを構築することや地域の課題を把握することなども含まれます。
地域包括支援センターが主体となって行う、実務者レベルの地域ケア会議です。
検討すべき個別ケースとはどういうものかというと、例えば
・支援者が困難を感じている
・支援が自立を阻害している
・必要な支援につながっていない
・権利擁護が必要
などの問題が挙げられます。
またケアマネージャーが提出した個別ケースだけでなく、民生委員や近隣住民からの相談・苦情によって発覚した問題を議題として検討する場合があります。
◆地域課題の検討
インフォーマルサービス(※)の強化や地域のネットワークづくり、地域に必要な資源の開発などを検討します。
地域に必要な取り組みを明らかにして、政策を⽴案・提⾔することも含まれます。
この場合の地域ケア会議は市町村が主体になって開催されることが多いです。
個別ケースの検討などを通して明らかになった地域課題を解決していくための代表者レベルの会議となります。
※インフォーマルサービスとは
介護保険サービスなどの公的機関による制度(フォーマルサービス)ではないサービス。
家族や友人、地域住民、ボランティア団体、NPO法人などによる支援のこと。
以上のような目的で地域ケア会議を行うことによって、
・地域住民の安心・安全とQOL向上
・自助・互助・共助・公助を組み合わせた地域ケア体制の整備
を同時に進めていく地域包括ケアシステムを構築します。
地域ケア会議には、次の5つの機能があります。
1. 個別課題解決機能
2. ネットワーク構築機能
3. 地域課題発見機能
4. 地域づくり・資源開発機能
5. 政策形成機能
これらの5つの機能は、先ほどお伝えした地域ケア会議の目的、
・個別ケースの検討
・地域課題の検討
を細分化したものと考えられます。
<個別ケースの検討>
1. 個別課題解決機能
2. ネットワーク構築機能
3. 地域課題発見機能
<地域課題の検討>
3. 地域課題発見機能
4. 地域づくり・資源開発機能
5. 政策形成機能
このように分けることができるでしょう。
それぞれについて解説していきます。
個別課題解決機能とは、
・自立支援に資するケアマネジメントの支援
・支援困難事例などに関する相談・助言
を行い、地域に住む被保険者の課題解決を支援する機能です。
また、それを通して地域包括支援センター職員やケアマネージャーの課題解決力向上を図り、ケアマネジメントの支援の質を高めることや会議参加者の連携を促進するといった意味合いもあります。
ネットワーク構築機能とは、地域の関係機関の連携を高める機能のことで、
具体的には、
・地域包括支援ネットワークの構築
・自立支援のためのケアマネジメントの普及
・住民との情報共有
・課題の優先度の判断
・連携・協働の準備と調整
などが促進されるということです。
またそれと同時に、残り3つの機能「地域課題発見機能」「地域づくり・資源開発機能」「政策形成機能」へつながっていくと考えられます。
地域課題発見機能とは、個別ケースの検討から見えてくる地域課題を明らかにする機能です。
個別ケースを検討する中で、関連して
・サービス資源に関する課題
・ケア提供者の質に関する課題
・利用者、住民の課題
などを明らかにしていきます。
それによって、地域にとって必要なサービスや社会資源は何か、また関係機関の必要な取り組みや役割は何かを検討することが可能になります。
地域づくり・資源開発機能とは、必要な地域資源を開発していく機能で、
具体的には
・有効な課題解決方法の仕組み化
・関係機関の役割分担
・社会資源の調整
・新たな資源開発の検討、地域づくり
といった取り組みのことです。
資源というのは、例えばインフォーマルサービスや地域の見守りネットワークなどが挙げられます。
政策形成機能とは、自治体が地域に必要な施策や事業を立案し実施していく機能です。
また必要であれば、都道府県や国へ政策を提言することも含まれます。
明らかになった地域課題に対して優先順位をつけ、利用可能な地域資源などを検討し、解決のための政策を立案していきます。
こういった地域課題の検討による施策が、個別支援に還元されていきます。
また新たな課題の発見にもつながり、各機能が循環していくという流れです。
地域ケア会議の概要や進め方について解説していきます。
地域ケア会議の運営は、会議当日だけでなく事前準備や終了後の振り返りもとても重要になります。
地域ケア会議の開催日程に決まりはなく、地域の判断によります。
定例で開催している地域もあれば、解決が必要な課題があれば随時開催するという地域もあるでしょう。
定例会議は「毎月3週目の火曜日 13時-15時(2時間)に開催」といったように開催週・曜日・時間まで固定することでわかりやすくなります。
随時開催の場合、議題によって「2時間を予定」「今回は1時間」といったように変動させられる点がメリットですが、前もって概算して周知しておくことが求められ、都度の日程調整が難しいこともあります。
いずれにせよ、会議の機能や目的を整理し、意味のある会議を実施することが重要です。
また主催側は、開催日程や頻度が参加者の負担とならないように配慮しなければなりません。
地域ケア会議の参加者は検討内容によって異なります。
主催者(設置主体)は地域包括支援センターか市町村(保険者)で、主催者が参加者を選定し招集をかけます。
▶主な参加者
会議の目的に応じ、行政職員、センタ-職員、介護支援専門員、介護サービス事業者、保健医療関係者、民生委員、住民組織の中から出席者を調整することとされています。
具体的には、
・自治体職員、包括職員
・ケアマネージャー、介護事業者
・民生委員
・PT、OT、ST
・医師、歯科医師、薬剤師
・看護師、管理栄養士、歯科衛生士
などの職種が、必要に応じて参加します。
また個別事例の検討内容に応じて、利用者本人やご家族が参加した方がよい場合もあれば、参加しない方がよい場合もありますので留意が必要です。
▶役割
会議参加者の中から、前もって下記の役割を決めておきます。
・司会進行役
・記録役
・事例提供者
司会進行役は主催者が担うことがほとんどです。
記録役は司会者が兼務する場合もありますが、別の人に任せた方がスムーズに会議が進行するでしょう。
また前もってケアマネージャーなどに個別事例の提出を依頼する必要があります。
◆司会進行役の視点やポイント
司会進行をする際に意識すべきポイントは次のとおりです。
・時間を管理する
・発言を促し、議論を活性化させる
・全員が発言できるように配慮する
・共通意見をまとめる
・異なる意見を整理し、議論できるようにする
・意見が偏った場合、他視点の提示を行う
・少数意見を確認する
・論点がずれた場合には軌道修正する
司会進行役には会議をコントロールすることが求められます。
限られた時間の中で、課題を明確にして解決策を導き出すために、上記のような点に配慮してスムーズに会議を進行しなければなりません。
地域ケア会議では、
・アセスメントシート
・家族図
・生活機能評価表
・課題整理表
など会議によってさまざまな資料が必要となります。
いずれにせよ、会議の質を向上させ、効率よく検討を行うための資料を準備することが大切です。
事前資料を作成のポイントとしては
・事例提出者の負担を軽減すること
・参加者全員が共通認識を持てるような理解しやすい資料であること
の2点に注意することです。
事例提供者の負担軽減を考えた場合、専門職のみで行われる会議であれば資料を新たに用意することなくケアプランシートなどをそのまま用いることを検討してもよいでしょう。
また参加者全員が理解できる資料を作成するためには、簡潔に記載することと、専門知識を持たない地域住民などにも理解できる内容の資料を用意することが求められます。
なお事前資料を用意しない場合には、必要な情報をホワイトボードなどに可視化しておくことが有効です。
地域ケア会議は次のような流れで進められます。
<地域ケア会議の流れ>
始まりの挨拶
↓
参加者の紹介
↓
会議の目的と全体の流れを説明
↓
配布資料を確認
↓
ケース概要の報告・共有
↓
ケース当事者の課題を明確にする
↓
長期・短期目標を決定
↓
優先順位を決定
↓
モニタリング方法を決定
↓
決定事項を確認
↓
会議終了
このように1回の地域ケア会議において決めるべきことが多数あります。
会議の終わりには、
・解決すべき課題
・達成すべき目標
・各自の役割
などについて再確認し、その日の内容を振り返るようにしましょう。
また会議で決定した内容については、利用者本人やご家族に了解を得ることが必要です。
地域ケア会議運営マニュアルより、個別レベルの地域ケア会議例を一点抜粋してご紹介します。
<介護支援専門員Aさんから地域包括支援センターに相談したケース>
<相談内容>
約1か月前から担当しているBさん(男性・88歳・要介護1)が、突然主治医Cの訪問診療を断わり、他のサービスを利用しようとしないため困っている。
<Bさんの状況>
混乱することが多く、理解力の低下が見られる。
腰痛のため外出が困難。
食事は近所のコンビニで総菜などを購入しているが、重複購入や冷蔵庫での腐敗が目立つ。
金銭管理もあやふやな様子。
<家族構成>
姪(遠方に居住)
一時的に訪れることはできるが、遠方在住のため介護に協力はできない。
上記の相談を受けた地域包括支援センターは、それぞれの情報を共有して今後の方向性を話し合うために地域ケア会議を開催しました。
◆主催者
地域包括支援センター
◆参加者
・Bさん
・介護支援専門員Aさん
・C医師
・民生委員
・市職員
・社会福祉協議会
◆話し合いの内容
◯直接目的
Bさんが自立した地域生活を継続できるように、支援を検討すること
◯間接目的
・介護支援専門員へのケアマネジメント支援
・地域包括支援ネットワーク構築
・地域課題の把握
◆地域ケア会議の成果
会議を通じて、Bさんと主治医Cさんとの理解が深まりました。
その結果、訪問診療を再開と訪問介護の試用が決定し、Bさんの地域生活を継続が決定したことが大きな成果です。
また間接目的である、介護支援専門員Aさんの力量向上と自信にもつながりました。
さらに、今後も同様のケースが増加する可能性があるという新たな地域課題が見つかりました。
(参考資料:地域ケア会議運営マニュアル|一般財団法人 長寿社会開発センター)
このような地域ケア会議の事例が、下記資料で多数まとめられていますのでぜひ参考にしてみてください。
◆地域ケア会議運営マニュアル|一般財団法人 長寿社会開発センター
◆地域ケア会議実践事例集|厚生労働省老健局
地域ケア会議の開催にあたってはさまざまな注意点がありますが、特に注意すべき3点をお伝えします。
・個人情報の取り扱い
・本人や家族の意思を尊重すること
・個別事例を提供したケアマネージャーへの配慮
地域ケア会議では、利用者やそのご家族、関係者らの個人情報を扱います。
個人情報保護法に基づき、個人情報の取り扱いについての基本方針を定め、参加者全員への周知徹底が必要です。
また、個別ケース検討の対象となる利用者やそのご家族らの意思を尊重しましょう。
課題解決やよりよい支援の検討が目的ではありますが、それが利用者らの意思を無視したものであってはなりません。
そして、事例を提供してくれたケアマネージャーに対しての配慮も欠かさないようにしましょう。
各専門家らの視点で「ああしたらいい」「こうしたらうまくいく」という一方的的な意見の押しつけにならないように注意が必要です。
会議の進め方によっては、吊し上げのように感じてしまうケアマネージャーもいますので、司会進行役が会議の流れをうまくコントロールすることが重要になります。
地域ケア会議について解説しました。
地域ケア会議は、地域包括ケアシステムを実現するための一つの手法であり、それ自体が目的となってはいけません。
そして地域包括ケアケアシステムもまた一つの手段でしかありません。
大切なことは「高齢者らが住み慣れた場所でその人らしく生活できる地域にするには何をすべきか」ということを考えていくことです。
そのために、それぞれの職種が建設的なアドバイスを心がけ、前向きな話し合いができる地域ケア会議にしていく必要があるでしょう。
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※掲載情報は公開日あるいは2023年03月31日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。