「レスパイトケア」という言葉を聞いたことがありますか?
レスパイトケアは、介護者をケアするためのサービスのことです。介護業界で働いている方のなかには、耳にしたことがある方もいるはず。
しかし「どのようなケアのことを言うのかはっきり覚えていない」また、意味を理解していても「サービスの種類など具体的なことまでは分からない」という方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は「レスパイトケア」とは何なのか、そしてどのようなサービスがあるのかについて紹介していきたいと思います。
介護する側のケア「レスパイトケア」とは?
レスパイトケアの「レスパイト(Respite)」とは、“小休止”“休息”“息抜き”“一休み”を意味します。
そしてレスパイトケアとは、介護する側つまり介護をおこなう家族が一時的に介護から離れ、休息やリフレッシュするために実施される介護サービスのことで、介護をする方のためのケアです。
在宅介護をおこなう介護者は、日々の介護で身体的な疲れだけでなく、精神的にも疲労が溜まってきます。この疲れをそのままにしておくと、介護者のストレスや身体的疲労が限界に達し、介護者自身が身体を壊してしまうなど在宅介護を続けることが困難になってしまいます。
そうならないためにも、在宅介護をおこなう家族は介護から一時的に離れ、自分自身の身体と心を休める時間を持つことが必要です。
レスパイトケアは、介護者の負担を軽減させることに繋がり、在宅介護を長く続けるためにも重要なケアと言えます。
しかしながら介護者のなかには
「自分のリフレッシュのために利用してもいいのかな?」
「介護を放棄していると思われないかな」
「自分たちだけ楽しい思いをするのは後ろめたさを感じてしまう」
といった理由から、レスパイトケアを利用せずに家族だけで介護を抱え込んでしまうことも少なくありません。
レスパイトケア「介護保険適用」で受けられる3種類のサービス
レスパイトケアとして受けられるサービスは、代表的なものとして4種類あります。
介護保険適用で受けられるレスパイトケアのサービスは、おもに以下の3種類です。
●デイサービス(通所介護)
●ショートステイ(短期入所生活介護)
●ホームヘルプ(訪問介護)
他にも、
●レスパイト入院(介護家族支援短期入院)
といった、医療保険を利用して受けられるサービスがあります。
それぞれ、どのようなサービス内容なのか見ていきましょう。
デイサービス
デイサービスとは、おもに朝から夕方までの日中に高齢者の介護をおこなうサービスのことです。介護職員が要介護者の自宅へ迎えに行き、デイサービス施設で要介護者を預かります。要介護者がデイサービスに行っている間、介護者は介護から解放され自分の時間を確保できます。施設で預かってもらえる時間が朝から夕方までと時間が長いため、しっかりと休息を取ることができます。【サービス内容】デイサービスが提供しているサービスは、送迎、食事、入浴、レクリエーション、看護師による健康診断など。看護師が常駐しているため、適切な医療ケアも受けられます。デイサービスは民間企業によって運営されていることがほとんどであるため、サービス内容や時間、費用は施設によって異なります。施設によっては、日中の日帰りだけではなく「お泊りデイサービス」を提供してることもあります。お泊りデイサービスとは、施設を利用した方がそのまま施設に宿泊できるサービスです。しかし、お泊りデイサービスの利用には介護保険が適用されないため、利用する場合は全額負担となります。【利用対象者】・要介護1以上の認定を受けている方デイサービスでは、要介護1~5の認定を受けている方が対象となりますが、実際にデイサービスを利用している方は要介護1・2の認定を受けている方がほとんどです。◎デイサービスについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください!「デイサービスってどんなサービス?」 ショートステイ
ショートステイとは、短期間だけ施設に宿泊し介護を受けるサービスです。ショートステイは1泊から利用でき、最大30日間まで連泊することも可能です。介護者が冠婚葬祭や出張、旅行などで数日間自宅を離れる場合、また介護者の体調不良や入院といった理由から一時的に介護が困難な状態になった場合などに活用できます。ショートステイを利用することで数日間介護から解放されるため、介護者はしっかりと休息でき心身ともにリフレッシュすることが可能になります。【サービス内容】ショートステイでは、自宅と施設の送迎や食事の提供、更衣、入浴、排せつ、移乗、歩行などの介助、またレクリエーションや看護師による健康チェックなどのサービスを受けられます。送迎時にはプロの視点から見た、要介護者の施設での様子や適切な介護方法のアドバイスをすることもあります。【利用対象者】・要支援1~要介護5のいずれかの介護認定を受けている方◎ショートステイについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください!「ショートステイってどんなサービス?」 ホームヘルプ
ホームヘルプも介護保険を利用し受けられる介護サービスの一つです。・介護サービスを利用せず、すべての介護を家族でおこなっている・要介護者が施設に対して抵抗をもっているなどの場合には、レスパイトケアとしてホームヘルプを利用することも可能です。ホームヘルプなら、施設に行かなくても自宅で介護サービスを受けられるため、施設に抵抗のある要介護者も安心して自宅で過ごすことができます。ホームヘルプの場合、利用する時間で料金が異なります。そのため、休息できる時間としては1~2時間ほどの短時間となります。【サービス内容】資格を持っている訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅に来て、食事や排せつ、入浴などの介助をおこないます。ホームヘルプで提供しているサービス内容は、おもに「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分けられます。■身体介護要介護者の身体に直接触れて行う介助です。たとえば、食事の介助やオムツ交換などの排せつ介助、お風呂に入るサポートをする入浴介助、衣類の着替えをサポートする更衣介助、また歩行や移乗、移動の介助、体位交換などの介助が身体介護に含まれます。■生活援助生活援助は、身体介護以外の掃除や洗濯、調理などの家事をおこないます。ただし、家政婦ではないので全て家事をおこなうわけではありません。要介護者が生活するうえで訪問介護員がおこなわなくても支障がない事柄、例えば庭の草むしりやペットの散歩、家族分の食事の調理などはサービス対象外となります。■通院等乗降介助通院等乗降介助は、要介護者が通院などのため移動が必要な際に、車両への乗車や降車の介助、通院先で受診の手続きや移動、薬の受け取りの介助などをするサービスです。【利用対象者】・原則65歳以上(※)・要介護1以上の認定を受けている方※40歳以上で特定疾病を患っており、要介護認定を受けている方であれば利用可能。◎訪問介護について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください!「訪問介護ってどんなサービス?」 レスパイト入院
レスパイト入院とは、介護保険ではなく医療保険を利用する短期入院サービスです。
介護保険によるショートステイの利用が困難な方を病院で受け入れます。
介護者の休養や冠婚葬祭などの事情によって、一時的に在宅療養・介護の継続が困難であると医師が判断した場合に利用することができます。
【サービス内容】
レスパイト入院では、食事や排せつ、更衣、入浴などの介助に加えて、その人に必要な医療管理をおこないます。また、身体の状態によってはリハビリを受けることも可能です。
レスパイト入院の期間は病院によって異なりますが最大1週間もしくは2週間がほとんどで、介護者の希望に合わせて相談し決定します。
基本的には、レスパイト入院中は検査や他科受診などは行いませんが、緊急時などは医師の判断により診察や検査をおこないます。
【利用対象者】
・医師からの要請がある方
・介護保険によるショートステイの利用が困難な方
・在宅で医療機器等を利用し、常時医療的管理や介助が必要な方
このように、レスパイトケアで利用できるサービスはいろいろあります。
しかし、介護者のなかには施設や病院に預けること、家族以外に介護を任せることに抵抗がある方もいます。その場合、保険適用外ではありますが「家事代行サービス」「洗濯代行サービス」「配色サービス」など、民間企業のサービスを利用し介護以外の部分をお手伝いしてもらうという方法もあります。
またレスパイトケアは、何かサービスを必ず利用しなければならない訳ではありません。介護者と会話をするだけでも介護者の気分転換やストレス軽減に繋がります。
サービスの利用に抵抗のある方などには、無理にサービスを進めず話し相手になってあげるのもいいでしょう。
まとめ
レスパイトケアは介護者が無理なく介護を続けるためにも、無くてはならないケアといえます。しかし実際は、前述したように「後ろめたさ」などを感じ介護を家族で抱え込んでしまい、介護者が倒れてしまうことも少なくありません。
在宅介護が増える今、介護者が「休息をとること」「リフレッシュし楽しむこと」に後ろめたさを感じることなく、レスパイトケアを上手く活用できるようにしていくことが重要です。そのためにも、介護業界に携わる一人ひとりが介護者に休息の大切さなどを伝えられるように、レスパイトケアについての正しい知識を身につけていきましょう。
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