老人ホームにおけるレクリエーションとは?企画方法から注意点まで詳しく解説

更新日:2022年09月06日

公開日:2022年09月05日

体操をする二人の女性

老人ホームの介護士となって少し仕事にも慣れてきたため、レクリエーションを初めて企画することになったけれど何から始めればよいのかわからないと悩んでいる人はいませんか?

この記事では老人ホームにおけるレクリエーションの企画方法から行う際の注意点まで詳しく解説します。

施設によるレクリエーションの企画の仕方の違いとは?

申請書類

介護保険においては、介護が必要となる要介護状態や、介護予防が必要となる要支援状態になると必要なサービスを受けることができますが、要支援状態と要介護状態を要支援1~2、要介護1~5の7つの区分にわけて要介護度と呼んでいます。

要介護認定では、身体機能・起居動作、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応の5群にわけた74項目をチェックして要介護度を決めますが、要介護度に応じて入居できる老人ホームには違いがあるのです。

そのため老人ホームにおけるレクリエーションを企画する時は、施設に入居している利用者の要介護度に配慮しなければならないと言えるでしょう。

要介護度に応じて、利用者はどのようなことができなくなるのかを表にまとめてみました。

起き上がり立ち上がり歩行入浴排泄食事認知機能
要支援1少し低下少し低下少し低下少し低下---
要支援2少し低下少し低下少し低下少し低下---
要介護1少し低下少し低下少し低下少し低下少し低下-少し低下
要介護2少し低下少し低下低下少し低下少し低下少し低下少し低下
要介護3低下低下低下大きく低下大きく低下少し低下低下
要介護4大きく低下大きく低下大きく低下大きく低下大きく低下低下大きく低下
要介護5大きく低下大きく低下大きく低下大きく低下大きく低下大きく低下大きく低下

要介護度が高くなるほど身体の動きや認知機能が低下するということを踏まえて、施設別でのレクリエーションの企画の仕方を3つご紹介します。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームには要支援1・要支援2の人は入居できないことを前提に、2017年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った「特別養護老人ホームにおける良質なケアの あり方に関する調査研究事業報告書」によると、要介護度別の入居者数は次のような結果でした。

要介護度要介護2以下要介護3要介護4要介護5
割合3.0%19.7%37.5%37.1%

要介護4と要介護5の入居者の合計が74.6%を占めるため、レクリエーションを企画する時は事前にレクリエーション内容の好みや生活の状況、身体やメンタルの状態などの情報収集をするアセスメントをしっかりと行い、安全に配慮する必要があります。

全員が参加するなら音楽の演奏を聴くレクリエーション、お笑いのステージなど身体や認知機能に左右されず楽しめるレクリエーションを企画するのが望ましいと言えます。

参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「特別養護老人ホームにおける良質なケアの あり方に関する調査研究事業報告書」

介護老人保健施設

介護老人保健施設は特別養護老人ホームと同じく要支援1・要支援2の人は入居できませんが、在宅生活への復帰を目的としたリハビリテーションを行うという側面があります。

そのため介護老人保健施設でのレクリエーションを企画する際は利用者の安全に十分に配慮しながらも、リハビリテーションにもつながる内容を企画するのが望ましいでしょう。

例えば7月7日までに利用者全員が協力して七夕飾りを完成させるレクリエーションは、はさみを使って切る、飾る、絵を描く、文字を書くなどさまざまな作業があるため、一人一人の残存機能を引き出すと同時に当日完成させた喜びも共有できます。

有料老人ホーム

2019年にPwCコンサルティング合同会社が発表した「高齢者向け住まいにおける運営実態の多様化に関する実態調査研究報告書」によると要介護度別の入居者数は次のような結果となりました。

介護付き有料老人ホーム住宅型有料老人ホームサービス付き高齢者向け住宅
自立・認定なし9.3%4.9%8.1%
要支援16.6%3.0%6.7%
要支援25.9%3.8%7.9%
要介護119.9%18.0%22.2%
要介護216.8%20.5%19.6%
要介護314.6%18.2%13.7%
要介護415.4%17.6%11.1%
要介護510.7%12.7%6.8%
平均2.22.62.0

特別養護老人ホームや介護老人保健施設と異なり、自立や要支援の利用者も入居していて介護度も平均要介護2前後となるため、有料老人ホームにおいては比較的自由度の高いレクリエーションができるでしょう。

週に1度集まって勝負が決まるゲームをするなど、継続性を意識したレクリエーションをすると目標ができ、QOL(生活の質)を高めることにつながるのではないでしょうか。

参考:PwCコンサルティング合同会社「高齢者向け住まいにおける運営実態の多様化に関する実態調査研究報告書」

月間・年間でのレクリエーションの企画の仕方とは?

介護士さんと女性

月間・年間を通したレクリエーション計画を立てて実行することで、メリハリのある生活ができることから、老人ホームにおけるQOL(生活の質)を高められます。

月間・年間のレクリエーション計画は次の5つの段階を踏むと作りやすくなります。

①年間におけるレクリエーションの目的とテーマを決める
②月ごとに目的に近づくためのレクリエーションを取り入れる
③年間を通しての大きなイベントや行事となるレクリエーションを1つ考える
④事業所や施設全体で行うイベントとも絡めて実行できるレクリエーションを考える
⑤月ごとのレクリエーションを仮設定する

最後が仮設定となっているのは、毎月のレクリエーションが実行できるかどうかによってスケジュールがずれる可能性があるためです。

これを踏まえて月別におすすめのレクリエーションをご紹介します。

1月

老人ホームレクリエーションで1月におすすめなのは昔ながらの正月遊びです。

福笑い・羽根つき・めんこ・すごろく・坊主めくり・駒・けん玉など、複数の遊びができるよう事前に準備しておくと、利用者が自分の好みや要介護度に応じて遊びを選べるでしょう。

アイスブレイクとは人が集まった時の緊張感をほぐして心のバリアを取り除き、和やかな雰囲気を作り出すための手法ですが、それぞれの遊びの由来をなぞなぞにして、アイスブレイクとして行うのもよいのではないでしょうか。

100円ショップで道具を揃えることで、予算を節約することもできます。

2月

老人ホームレクリエーションで2月におすすめなのは豆まきです。

事前準備として福豆を準備しますが、小分けのパックになったものを選ぶと、後で食べる時に盛り付けが手早くできます。

職員は盛り上げ役として鬼のお面やコスプレなどをし、利用者に楽しく豆をまいてもらいましょう。

3月

3月におすすめの老人ホームにおけるレクリエーションはお花見です。

まだ肌寒い日もあるため晴れた日を選び利用者には暖かい服装をしてもらった上、近くの公園などに足を運んでみましょう。

暖かい飲み物を準備して水分補給をしながら、ゆっくりと桜を楽しんでみてください。

4月

4月におすすめの老人ホームにおけるレクリエーションは運動会です。

アイスブレイクとして職員と利用者が一緒にラジオ体操をしてから始めましょう。

玉入れ、ボール回しゲーム、輪投げなど要介護度に合わせてさまざまな競技を選べるようにし、必ずどれか1つの競技には参加してもらうようにします。

また事前準備としてメガホンや鈴、タンバリンなどを準備し、応援も楽しめるようにするとなおよいでしょう。

5月

老人ホームレクリエーション5月におすすめなのは鯉のぼり作りです。

好みや要介護度に合わせて紙をはさみで切る、折り紙を折る、文字や絵を描くなど何か1つの作業をしてもらい、協力して1つの鯉のぼりを完成させましょう。

廊下やデイルームに一定期間飾っておくと、利用者や施設を訪れた人が見て楽しめます。

6月

老人ホームレクリエーション6月におすすめなのは6月4日~6月10日の歯と口の健康習慣に合わせて行う口腔体操です。

歯と口の健康週間についての説明を、アイスブレイクも兼ねて質問も交えながら行うとスムーズです。

口腔体操のやり方については事前に職員がYouTubeの動画などである程度把握しておき、利用者と一緒に行うとよいでしょう。

7月

老人ホームレクリエーションとして7月におすすめなのは、折り紙で天の川を作るレクリエーションです。

事前に模造紙、折り紙、星型のシールなどの必要素材を100円ショップなどで準備しましょう。

折り紙を輪にして飾ったり、シールを貼ったり、絵や文字を書いたりと要介護度に合わせた分担を行い、七夕前後に完成させ飾りましょう。

8月

8月におすすめの老人ホームにおけるレクリエーションは夏祭りです。

職員が金魚すくい、ヨーヨー、わたあめ、ラムネなどの出店を作って店員となり、利用者にはお客さまになってもらいましょう。

BGMでお囃子や盆踊りの民謡などを流すと、賑やかで楽しい時間を過ごすことができます。

9月

老人ホームにおける9月レクリエーションでおすすめなのは敬老の日にちなんだ敬老会です。

事前に職員が余興などを準備すると楽しんでもらえるでしょう。

またプレゼントとして老人ホームでのスナップ写真と、職員からの寄せ書きなどを贈ると喜ばれます。

10月

老人ホーム10月におすすめのレクリエーションは秋の遠足です。

無理なく歩いて行ける範囲の場所を選び、外の空気を吸っておやつなどを食べて帰ってくると程よいリハビリにもなります。

事前におやつのリクエストを募ると、当日を楽しみにしてもらえるのではないでしょうか。

11月

11月におすすめの老人ホームにおけるレクリエーションは落ち葉アートです。

要介護度の低い人には事前に落ち葉拾いもレクリエーションとして行い、その次の回などにそれを素材として模造紙に貼り付け、1つの作品をみんなで作ります。

できた作品は廊下などに飾ると利用者も職員も見て楽しめます。

12月

老人ホーム12月におすすめのレクリエーションはクリスマスパーティです。

みんなでクリスマスの歌を歌ったり、簡単なゲームをしたりすると盛り上がるでしょう。

最後におやつとしてケーキを食べて、楽しいクリスマスを過ごしてみてください。

いろいろなジャンルのレクリエーションを企画するには?

ボール運動をする二人の女性

老人ホームレクリエーションの企画担当になると、楽しんでもらえるレクリエーションのアイデアがなかなか思いつかないこともあるでしょう。

そんな時はレクリエーションの情報雑誌や情報サイトを探すのもよいのですが、次の3つの視点からレクリエーションを発想してみるのも大切なのでそれぞれご紹介します。

体操や運動を取り入れたレクリエーション

特別養護老人ホームのように要介護度の高い施設ほど、利用者は運動不足になりがちです。

そのためアセスメントに基づき利用者の残存機能を活かせる範囲で、レクリエーション体操や運動を取り入れられないかを考えてみることが大切だと言えるでしょう。

例えば動かせる身体の部分でストレッチをする、座った状態で体操をするなどがおすすめです。

手先を動かすレクリエーション

老人ホームレクリエーションにおいては認知症予防の観点から、手先を動かすレクリエーションを行うのも大切です。

例えばグーパー体操、折り紙など手の指を使うレクリエーションを定期的に企画すると効果的なのではないでしょうか。

ゲームをするレクリエーション

レクリエーションにゲームを取り入れるのも、認知症予防の観点からは大切です。

ゲームをするにはルールを把握し、勝負に勝つための戦略を考えて行動する必要があるため、認知症予防につながるのです。

レクリエーション前のアイスブレイクにゲームを取り入れるだけでも良いので、積極的に行ってみてください。

レクリエーションをする上での注意点

車いすのマーク

レクリエーションはどのようなことに気を付けて行うのが望ましいのでしょうか。

3つご紹介します。

簡単にできるレクリエーションにする

老人ホームでは、簡単なレクリエーションを意識して企画をすると喜ばれるでしょう。

要介護度が高くなるにつれ認知機能は低下していきますが、それでも楽しめる内容が望ましいということです。

利用者にとってレクリエーション参加への敷居を上げない内容を意識することが大切です。

盛り上がる内容にする

参加者全員が盛り上がる内容のレクリエーションは、利用者にとって老人ホームでの良い思い出となります。

参加して楽しかったという気持ちが、またレクリエーションに参加したいという気持ちを引き起こし、QOL(生活の質)の向上にもつながるでしょう。

座ってもできるレクリエーションとする

座ってもできるレクリエーションは利用者にとってレクリエーション参加への敷居を下げるだけではなく、疲れたら座ってできるという安心感ももたらします。

利用者がマイペースで参加できるよう、配慮することが大切です。

まとめ

介護士さんと楽しそうに話す女性

老人ホームにおけるレクリエーションを企画する時は、施設に入居している利用者のアセスメント内容に基づき、要介護度や季節感、またさまざまなジャンルを意識することが大切だと言えるでしょう。

この記事も参考にしながら、ぜひ利用者が楽しめるレクリエーションを企画し実行してみてください。

※掲載情報は公開日あるいは2022年09月06日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

あなたにあなたにピッタリの求人をご紹介! 求人を紹介してもらう