更新日:2022年10月25日
公開日:2022年10月18日
家族に介護が必要な高齢者がいるため、定期的にショートステイを利用して介護休みを取るようにしているけれど、介護疲れが出てきてショートステイの期間では少し物足りなさを感じてきたという人はいませんか?
この記事ではそんな時に利用したいミドルステイについて、かかる費用から利用するメリットまで詳しく解説します。
ミドルステイとは連続利用日数が30日と定められているショートステイ(短期入所生活介護)よりも長い、1か月~3ヵ月程度の期間連続して介護施設に預けるサービスのことを指しますが、これは介護保険で定義づけられたサービスではありません。
元々障害者総合支援法に基づくサービスとしてミドルステイが存在しており、身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者の人を対象に地方自治体などが行ってきました。
高齢者を対象にして行われるミドルステイでは、地方自治体が事業として行っているものと有料老人ホームが一時預かりサービスの1つとして行っているものの2種類があります。
地方自治体が提供するミドルステイはショートステイと比較すると一般的に利用条件が厳しくなりますが、有料老人ホームのミドルステイは比較的融通が効きやすいのが特徴的と言えるでしょう。
ショートステイとは短期入所生活介護とも呼ばれ、利用者が短期間施設に入所し日常生活に必要な介護を受けるサービスのことです。
ミドルステイとショートステイにはどのような違いがあるのでしょうか。
表にまとめてみました。
サービスの種類 | 入居期間 | 実施施設 | 利用者負担 | |
ミドルステイ | ・介護保険外サービス | ・1か月~3ヵ月程度 | ・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) ・介護老人保健施設(老健) ・軽費老人ホーム ・有料老人ホーム | ・地方自治体が行う場合自治体により異なる ・有料老人ホームが実施する場合1か月以上滞在すると、介護サービス部分に介護保険が適用されるため1割負担 |
ショートステイ | ・介護保険サービス | ・連続利用日数の上限は30日 | ・特別養護老人ホーム ・介護老人保健施設 ・有料老人ホーム | ・1割負担 |
ミドルステイとショートステイの大きな違いは、介護保険を使ったサービスであるかどうかと入居期間であると言えるでしょう。
ロングショートステイとは本来短期間利用するはずのショートステイを、やむを得ない理由により連続利用日数の上限を超えて利用することです。
ミドルステイとロングショートステイにはどのような違いがあるのでしょうか。
表にまとめてみました。
サービスの種類 | 入居期間 | 必要書類 | 利用者負担 | |
ミドルステイ | ・介護保険外サービス | ・1か月~3ヵ月程度 | ・地方自治体と有料老人ホームが指定する提出書類 | ・地方自治体が行う場合自治体により異なる ・有料老人ホームが実施する場合1か月以上滞在すると、介護サービス部分に介護保険が適用されるため1割負担 |
ロングショートステイ | ・介護保険サービス | ・ショートステイの連続利用日数上限である30日を超える | ・理由届出書 ・ロングショートステイ中のケアプラン | ・連続利用日数の上限を超えた場合全額自己負担 |
ロングショートステイの場合ショートステイの連続利用日数上限を超えると、理由届出書とケアプランが必要となることと、費用を全額自己負担しなければならない点に注意が必要です。
ロングステイとは、要介護認定を受けた人が施設に入居して日常生活に必要な支援を受けることです。
ミドルステイとロングステイにはどのような違いがあるのでしょうか。
表にまとめてみました。
サービスの種類 | 入居期間 | 実施施設 | 利用者負担 | |
ミドルステイ | ・介護保険外サービス | ・1か月~3ヵ月程度 | ・特別養護老人ホーム ・介護老人保健施設 ・軽費老人ホーム ・有料老人ホーム | ・地方自治体が行う場合自治体により異なる ・有料老人ホームが実施する場合1か月以上滞在すると介護サービス部分に介護保険が適用されるためが1割負担 |
ロングステイ | ・介護保険サービス | ・施設の種類により異なる | ・特別養護老人ホーム ・老健 ・介護療養型医療施設 ・特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホームなど) ・介護医療院 | ・1割負担 |
ミドルステイでは一時的に介護施設に滞在して必要なサービスを受けますが、ロングステイでは在宅復帰を目標に長期間に渡って施設に入所し、医療、リハビリ、介護といったサービスを受けるのが大きな違いと言えるでしょう。
参考:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「公表されている介護サービスについて」
ミドルステイを利用するには、どのくらいの料金がかかるのでしょうか。
地方自治体が提供するミドルステイと有料老人ホームが提供するミドルステイにわけてご紹介します。
地方自治体が提供するミドルステイの場合、料金の計算方法や自己負担額は自治体によって異なりますが、参考となる例を表にまとめてみました。
地方自治体名 | サービス内容 | 期間 | 対象者 | 料金 |
高岡市 | ・高齢者を介護する人が、病気や出張で介護ができない時、特別養護老人ホームなどに一時的に入所できる | ・ショートステイ期間を含めて最長3ヶ月間 | ・要介護認定を受けた人 | ・要支援、要介護の区分にかかわらず1日2,250円 |
神戸市 | ・主な介護者が入院したり継続的な介護ができないと認められたりした場合、市の指定するサービス提供事業所に入所できる | ・介護者の入院が理由の場合最長3か月まで ・介護者の入院以外が理由の場合最長7日間まで | ・要介護認定を受けた人 | ・1割負担 |
黒部市 | ・介護者の入院などやむを得ない理由で居宅での介護を受けることが難しくなった場合、介護保険のショートステイの利用限度日数を超えて入所できる | ・ショートステイの場合1回の利用は連続3ヵ月以内、年間6ヵ月まで ・短期入所療養介護の場合年間3ヵ月まで | ・要介護認定を受けた人 | ・介護サービス費の1割 ・滞在費と食費 |
これらの例から地方自治体の場合、ミドルステイの料金を定額料金としたり、ショートステイの料金と同等に1割負担としたりすることが多いのがわかります。
参考:高岡市公式ホームページほっとホット高岡「ミドルステイ」
参考:神戸市「市町村特別給付(ミドルステイ・緊急ショートステイ・緊急一時保護サービス・災害時ショートステイサービス)」
参考:黒部市「高齢者の福祉」
有料老人ホームが提供するミドルステイの場合、期間を1年以上などの長期間にしてロングステイに準じた料金形態を取っていたり、最短1ヵ月からの利用でショートステイとは異なる料金形態を取っていたりと滞在期間に応じた料金となっていることが多いようです。
そのため料金に応じてどのようなサービスが受けられるのか、また利用料に含まれない有料サービスはどのような内容なのかをよく確認する必要があると言えるでしょう。
ミドルステイの利用には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
ミドルステイは、介護を担う家族のレスパイトケアとして利用することができます。
レスパイトケアとは介護をする家族が一時的に介護から離れ、休息してリフレッシュを図るために行われる介護サービスのことで、英語で小休止や息抜きといった意味を持つ「Respite」から名付けられました。
介護保険サービスを用いて行うことのできるレスパイトケアには訪問介護(ホームヘルプ)、通所介護(デイサービス)、ショートステイなどがあります。
また介護保険外サービスを用いて行うことのできるレスパイトケアには家事援助、外出支援、見守りサービスなどがありますが、ミドルステイも選択肢の1つです。
レスパイトケアとしてミドルステイを利用すると、ショートステイと比較してより介護者が心身をしっかりと休めることができます。
家族の介護疲れをいやし、介護離職や高齢者虐待などを防止するためにもレスパイトケアとしてミドルステイを利用するのは有効だと言えるでしょう。
老健でミドルステイをすると、元々がリハビリを積極的に行って在宅復帰を目指す施設のため、自宅に戻った時自分でできることが増える可能性があります。
このことからリハビリで身体の機能回復が見込めるなら、同じ介護施設に預けるのでも老健を選択した方が家族にとって介護が楽になるでしょう。
また高齢者自身にとっても、目標がない状態でミドルステイの日々を過ごすよりは、身体をある程度動かせるようになることを目標に日常生活を送る方がQOL(生活の質)の向上につながります。
ミドルステイではショートステイよりも長い期間滞在して集中的にリハビリに取り組むことができるため、回復の可能性があるなら老健でのミドルステイをおすすめします。
そろそろ訪問介護、デイサービス、ショートステイを組み合わせても在宅生活を送るのは難しくなってきたと感じる場合、ミドルステイを利用して入所を希望する老人ホームにお試し入所をしておくのもよいでしょう。
そのような手間をかけなくても、デイサービスやショートステイでお世話になった介護施設にそのまま入居すれば良いと考える人もいるかもしれません。
しかし、一時預かりという形のデイサービスやショートステイの場合、高齢者本人が介護施設に不満があってもそれを我慢し、周囲の人に伝えていない可能性があるため、入所する施設を選ぶのは慎重に行った方がよいのです。
ミドルステイではショートステイよりも長い期間介護施設に滞在するため、その施設に入居するメリットとデメリットをよりしっかりと把握することができます。
今までお世話になった施設も含め、いくつかの施設でミドルステイをしてから入所することで、納得感を持ってその施設で暮らすことができるのではないでしょうか。
ミドルステイをする介護施設を選ぶには、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。
3つご紹介します。
ミドルステイをする介護施設を選ぶ時は、事前準備として必ず施設に求めるニーズを整理しましょう。
例えば次のような項目について考えておくと、本人に合った施設を選びやすくなります。
・個室と多床室どちらがよいか
・利用期間
・料金
・リハビリをどの程度行うか
・レクリエーションの有無
・食事の内容
またニーズには本人の意志に基づく優先順位をつけておき、全てのニーズがかなえられない場合、どの点を妥協することができるのかを把握しておくことも重要です。
地方自治体が提供するミドルステイ料金は一律ですが、有料老人ホームが提供するミドルステイは料金形態が施設によって異なる上、利用料には含まれない有料サービスなども存在します。
そのためホームページで料金について確認するのはもちろんですが、似たようなサービスを行っている有料老人ホームをいくつか選び、料金が適正であるかどうかを比較・検討してみた方がよいでしょう。
ミドルステイをする前は、必ず高齢者本人と一緒に施設見学を行いましょう。
施設見学をする際にチェックしておきたいポイントは次の通りです。
項目 | チェックポイント |
利用者の様子 | ・リラックスしているか ・感情が表現できているか |
スタッフの様子 | ・疲弊したり、イライラしたりしていないか ・敬語や挨拶がきちんとできるか ・スタッフ同士の連携が取れているか ・スタッフの人数と利用者の人数のバランスは取れているか |
食事介助 | ・高齢者の食べるペースに合わせているか |
建物・設備 | ・清潔感があるか ・排泄物の臭いはしないか ・整理整頓がされているか |
レクリエーション | ・レクリエーションの頻度と内容 ・誘導時に無理強いをしていないか |
ミドルステイで安心・安全な生活を送ってもらえるようにするのはもちろんのこと、高齢者本人のQOLを高め、ニーズに合ったサービスを受けるためにも事前のチェックは怠らないようにしましょう。
ミドルステイとは1か月~3ヵ月程度の期間連続して高齢者を介護施設に預けるサービスのことで、レスパイトケア、リハビリでの機能回復、お試し入所などさまざまな目的で利用することができます。
この記事も参考に、高齢者本人が生活しやすい施設を選びミドルステイを利用してみてください。
※掲載情報は公開日あるいは2022年10月25日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。