介護職員の賃上げは今後もある?2023年以降の処遇改善とは

更新日:2023年03月30日

公開日:2023年03月30日

賃上げ

「介護職員の賃上げはいつから?」と多くの方が気にしているでしょう。
政府の介護職員の賃上げ政策といえば処遇改善加算です。
処遇改善加算は令和4(2023)年以降も改定し、加算額は増えていくのでしょうか?
今回は介護職員の賃上げについて、処遇改善加算や物価高などの視点で解説します。

介護職員は今までも賃上げされてきた?

パソコンを見ながら話すスタッフ

まずは、一般的な賃上げについて理解してから、介護職員の賃上げ政策について解説します。

賃上げと昇給の違いとは

賃上げは、昇給とベースアップに分けられます。
昇給とは、勤務している職員の給料が定期的に上がることです。
定期的に昇給するため、定期昇給ともいいます。
日本では4月から翌年の3月までを一年度としている法人が多いため、勤務している職員は4月1日に給料が見直されることが一般的です。
減給は珍しいため、ほとんどの職員は一斉に給料があります。
一方、ベースアップとは職員全員の給料のベースが上がることです。
例えば、新卒で令和3(2021)年4月に入社した職員の基本給が20万円で、翌年の令和4(2022)年4月に同じように新卒で入社した職員の基本給が21万円になる場合です。
昇給は勤務年数や評価で、ベースアップは物価高や給料の底上げで行われます。

介護職員の賃上げとは

介護職員の賃上げには、介護施設が独自で行うものと政府が政策として行うものがありますが、政府の政策による賃上げが重要と言えます。
なぜなら、介護施設の収入は行政からの介護報酬がほとんどを占めているためです。
介護職員の賃上げ政策の中心は介護職員処遇改善加算です。
同加算は、平成21(2009)年10月から始まった介護職員処遇改善交付金がルーツで、同交付金から平成24(2012)年4月に加算制度に移行しました。
その後は複数回の改定をへて、以下の3種類の処遇改善加算が乱立する複雑な制度になっています。

● 介護職員処遇改善加算
● 介護職員等特定処遇改善加算
● 介護職員等ベースアップ等支援加算


上記の3種類の処遇改善加算を得たお金を、介護施設は原則として賃上げ以外の目的では使用できません。
なお、現状の3種類の処遇改善加算体制は介護施設の事務処理の負担が大きいため、国は一本化する方向で検討しています。

2022年 の支援補助金とベースアップ等支援加算とは

令和4(2022)年から介護職員の給料を、月額平均9,000円アップさせる制度が創設されました。
この制度が、介護職員処遇改善支援補助金と介護職員等ベースアップ等支援加算です。
令和3(2021)年11月に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の一つで、実施時期は以下のとおりです。

● 介護職員処遇改善支援補助金:令和4年2月~9月
● 介護職員等ベースアップ等支援加算:令和4年10月~


上記のように介護職員処遇改善支援補助金のあとを、介護職員等ベースアップ等支援加算に引き継ぐ形になっています。
両制度とも目安になる賃上げ額は9,000円と同じで、施設の判断で事務職員や相談員などの介護職員以外にも利用できます。

賃上げ政策対象外の職種がある?

前述の3種類の加算のうち最初に始まった介護職員処遇改善加算は、介護職員以外の職員の給料改善には使用できません。
なぜなら、介護職員の賃上げを目的とした加算制度であるためです。
介護施設は同加算で得たお金を以下の職員の賃上げに使用できません。

● ケアマネジャー
● 支援相談員・生活相談員
● 事務職員
● 栄養士
● 看護師


同加算を上記の職員の賃上げに利用することは、介護報酬の不正受給になってしまい、過去に処分された施設もあります。

介護職員の賃上げ政策は効果があったのか

給与支給明細書

平成21(2009)年10月の介護職員処遇改善交付金から始まり、様々な賃上げ政策が今まで行われてきました。
ここでは介護職員の賃上げ政策の効果について解説します。

介護職員の給料の推移

介護職員の賃上げ政策は効果を上げています。
なぜなら、介護職員の平均給料は年々上昇しているためです。
常勤の介護職員の月給は以下のように推移しています。

●平成21年(2009)9月:257,880円
●令和2年(2020)9月:315,410円
●令和3(2021)年9月:323,190円

※月給=基本給(月額)+手当+一時金(4月から9月支給金額の1/6)

令和3年と平成21年を比較すると月給は65,310円増え、計算上では年収で80万円以上増えています。
令和2年から令和3年の一年間でも、月給が7,780円増えています。
給料の推移から判断すると、賃上げ政策は成功していると言えるでしょう。
参照:平成21年度介護従事者処遇状況等調査
   令和3年度介護従事者処遇状況等調査

賃上げ以上に物価が上がっている!

介護職員の賃上げ政策は効果を上げていますが、令和4年の物価高が効果を打ち消しています。
令和4(2022)年12月時点の物価は令和2年から4.0%上昇しているためです。
令和4年から始まった介護職員等ベースアップ等支援加算は、月額平均3%の給料をアップさせる制度ですが、物価は3%以上に上がりました。
さらに、今回の物価高は、生活に直結するものが以下のパーセンテージで上がっています。

● 穀類:9.6%
● 生鮮魚介:16.2%
● 肉類:7.1%
● 電気代:21.3%
● ガス代:23.3%


生活に必要なものが上がっている現状では、賃上げ政策の効果は感じられないでしょう。

参照:総務省 2020年基準消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)12月分及び2022年(令和4年)平均

今後も賃上げ政策は続くのか?

腕を組み考えるスタッフ

物価高で介護職員もお金のやりくりに苦労しており、賃上げが実感できる政策を求めているでしょう。
予測の範囲ですが、令和5(2023)年以降も介護職員の賃上げ政策は続くと言えます。
なぜなら、岸田首相や厚生労働省介護給付費分科会の委員が、賃上げ政策を続ける趣旨の発言をしていたためです。
岸田首相は令和5年1月26日の国会の質疑応答で、「今後も介護職員の処遇改善を続ける」という趣旨の発言をしていました。

参照:衆議院衆議院インターネット審議中継

また、令和4年1月開催の厚生労働省介護給付費分科会に出席た小林委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局局長)は、「全産業平均の水準まで介護職員の処遇改善を継続的に取り組むべき」という趣旨の発言をしていました。

参照:厚生労働省 第206回社会保障審議会介護給付費分科会(議事録) 

日本の総理大臣や介護報酬の方向性を決める厚生労働省審議会の委員の発言から、令和5年以降も介護職員の賃上げ政策は続くと予想できます。

介護職員が給料をアップさせる方法とは

ステップアップ

賃上げ政策への期待は当然ですが、介護職員は自分の力で給料をアップさせられます。
考えられる方法は以下のとおりです。

● 資格取得:資格手当、ケアマネ・相談員へのステップアップによる給料アップ
● 昇進:役職者手当・基本給のアップ

ケアマネジャーや相談員の給料が介護職員より高いため、資格取得によるステップアップはおすすめです。
昇進は慣れた介護施設・法人内にいながら給料をアップできます。
ほかには転職という給料アップの方法もありますが、給料アップの不確実性や新たな社風への慣れなどのリスクが伴います。
ただ、給料アップの確実性が高いなら検討してもよいといえます。

介護職員が積極的に行動して給料をアップさせよう!

OKサインのスタッフ

介護職員の賃上げは、平成21(2009)年にスタートした介護職員処遇改善交付金をはじめとして、様々な政策で行われています。
令和4(2022)年から新たな賃上げ政策が実施されています。
介護職員の平均給料が年々上昇していることから、これらの賃上げ政策は成功していると言えるでしょう。
ただ、令和4年の物価高は賃上げ政策の効果を打ち消していることも事実です。
令和5(2023)年以降のさらなる賃上げ政策の実施に期待しつつ、資格取得や昇進などによって介護職員自らの給料アップも行っていきましょう。

※掲載情報は公開日あるいは2023年03月30日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

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