介護疲れとは?引き起こしやすい人の特徴から対策まで詳しく解説

更新日:2023年06月05日

公開日:2023年06月02日

腰痛の女性

家族が病気で倒れて以来介護を続けてきているけれど、最近疲れてしまって前向きに取り組むことができないと悩んでいる人はいませんか?

この記事では、介護疲れを引き起こしやすい人の特徴から介護疲れへの対策まで詳しく解説します。

介護疲れとは?

腹痛の女性

介護疲れとは介護をすることによる身体的・精神的疲労のことを指します。

介護疲れを起こしているかどうかは、次の項目によってチェックすることができます。

介護疲れの種類チェック項目
身体的疲労・睡眠不足が続いている
・原因のわからない体調不良が続いている
・食欲がない
・身体に負担の少ない介護方法(ボディメカニクスなど)の知識がない
・介護は主に自分1人で行っている
精神的疲労・ネガティブになった
・同じ考えが頭から離れず考えがまとまらない
・イライラすることが増えた
・周囲に介護に関する相談相手がいない
・おしゃれや社会のことに関心が持てない

身体的疲労、精神的疲労のチェック項目とも、半分以上に当てはまっていれば介護疲れを疑ってみた方がよいでしょう。

介護疲れの原因

高齢女性を支える女性

介護疲れ原因には、次のようなものがあります。

項目具体例
身体的負担・起床介助
・移乗介助
・排泄介助
・入浴介助
精神的負担・共感疲労(ネガティブな感情に接した際に感情移入し過ぎてしまい、自分の心が疲労した状態)
・要介護者、ケアマネージャー、ヘルパーなど周囲の人とのコミュニケーション
経済的負担・介護保険サービス利用時の一部自己負担
・介護保険外サービス利用時の全額自己負担
・介護離職による生活費の負担
認知症介護の負担・意思疎通の困難
・徘徊への対応

介護疲れ原因は上記のように多岐に渡り、状況や人によって異なることを覚えておきましょう。

介護疲れを引き起こしやすい人の特徴

ハートの手紙

介護疲れを引き起こしやすい人には、どのような特徴があるのでしょうか。

3つご紹介します。

「べき思考」の人

「べき思考」の人は介護疲れで身体的疲労を引き起こしやすいと言えます。

べき思考とは「~するべきである」または「~するべきではない」という考えにとらわれてしまっている状態を指し、心理学では認知のゆがみ(問題になることが多い考え方の癖)の1つに分類されます。

例えば介護をしていく中で、次のような考え方をしてはいないでしょうか。
・介護は自分1人でがんばならければならない
・片付いていない家にはお客様を入れてはならない
・迷惑や負担になるので介護について他人に相談してはいけない

上記の文章には「べき」という言葉が入っていないので一見わかりにくいのですが、下記の文章に置き換えると、べき思考であるかどうかが見えてきます。
・介護は自分1人でがんばる「べき」である
・片付いていない家にはお客様を入れる「べき」ではない
・迷惑や負担になるので介護について他人には相談しない「べき」である

つまり、上記のような考え方の人は多かれ少なかれ「べき思考」に囚われているということです。

べき思考は今までの経験の積み重ねから生まれる思考なのでなかなか取り払うのは難しいですが、「べき」を疑う方法で上記の3つの文章を分析し、べき思考を取り払ってみましょう。

べき思考べきを疑う
・介護は自分1人でがんばる「べき」である・介護はヘルパーさん、兄弟、親戚など他の人に任せてもよい
・片付いていない家にはお客様を入れる「べき」ではない・片付いていない家でもそれを心地よく感じてくれる人もいる
・迷惑や負担になるので介護について他人には相談しない「べき」である ・相談事を迷惑や負担と感じるかどうかは自分ではなく相談された相手が決めること

「べき」の入った文章を読んでから、その「べき」は本当かどうかを落ち着いて考えてみてください。

選択肢や方法が1つしかない場合というのは、実はほとんどないことに気づくはずです。

もし自分が介護疲れを起こしていて、普段からよく「べき」という言葉を口にしているなら、まずはその「べき」が自分を苦しめていないか確認し、疑ってみましょう。

ネガティブな感情に感情移入しやすい人

ネガティブな感情に感情移入しやすい人は、介護疲れで精神的疲労を感じやすいと言えます。

ネガティブな感情に接した際に感情移入し過ぎてしまい、自分の心が疲労した状態を共感疲労と呼びますが、共感疲労には次のような対処方法があります。

・心身を休ませる
・課題の分離(自分の課題(自分でコントロールできること)と他人の課題(自分がコントロールできないこと)を分けて考える)をする
・自分のプライベートを大切にする
・辛い気持ちを言葉にする
・生活に運動を取り入れる

共感疲労に心当たりのある人は、まず上記の方法を試してみるとよいでしょう。

また共感疲労になりかけているのではないかと感じている人には、次の予防方法を知っておくのをおすすめします。

・共感疲労について知識を持つ
・自分の感情を否定しない
・要介護者のどのような感情に共感しやすいかを把握する

要介護者のどのような感情に共感しやすいかを知っておけば、その時に課題の分離を意識することで相手の感情に巻き込まれにくくなります。

自己肯定感が低く罪悪感を感じやすい人

自己肯定感が低く罪悪感を感じやすい人も介護疲れによる精神的疲労を引き起こしやすいでしょう。

自己肯定感が低い人は介護をしながら常に自分のしていることに問題があったり、間違えたりしているのではないかと疑念を抱きやすいため、自信を持って介護をすることができません。

そのため介護をしていく中で常に自分を責め、罪悪感を抱き続けることから介護疲れに繋がりやすくなってしまうのです。

自己肯定感が高い人は自分があまりにも責められ続けると、立ち止まって本当に自分に責められ続ける理由があるのかを考え分析することができますが、自己肯定感の低い人は自分は責められて当然の人間だと考えているためこのような分析は難しいでしょう。

また介護をする上では楽しいことや幸せを感じることも多々ありますが、自己肯定感の低い人はこれらに目を向けることが難しかったり、ネガティブなことばかりに意識が向いてしまったりするため介護疲れが癒されにくいとも言えます。

介護疲れが引き起こす問題

腕を振り上げる女性と頭を抱える高齢者

介護疲れが引き起こす問題には、どのようなことがあるのでしょうか。

2つご紹介します。

高齢者虐待

介護疲れが引き起こす大きな問題として高齢者虐待があります。

2021年に厚生労働省が発表した「令和3年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」によると高齢者の世話をしている家族、親族、同居人などによる高齢者虐待の判断、相談、通報件数は次のような結果でした。

 2020年度2021年度増減
虐待判断件数17,281 件16,426 件- 855 件( - 4.9%)
相談・通報件数件数35,774 件36,378 件+604 件(1.7%)

また、虐待の発生要因は次の通りです。

虐待の発生要因割合
被虐待者の「認知症の症状」9,038 件(55.0%)
虐待者の「介護疲れ・介護ストレス」8,615 件(52.4%)
虐待者の「精神状態が安定していない」7,993 件(48.7%)
「被虐待者との虐待発生までの人間関係」7,776 件(47.3%)

高齢者虐待の発生要因として、介護疲れが大きな割合を占めているのがわかるでしょう。

一方2021年の高齢者虐待による死亡事例は37件で、調査を開始した2006年から最も高い数値となりました。

これらのことから介護疲れをそのままにしておくと、高齢者虐待の発生からそれによる死亡という大きな問題が引き起こされる可能性が高いと言えるのです。

参考:厚生労働省「令和3年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」

介護離職によるミッシングワーカーの増加

介護疲れからの介護離職、それによるミッシングワーカーの増加も問題視されています。

介護離職とは、家族や親族の介護をするためにそれまで働いていた会社をやめてしまうことを指します。

2021年に厚生労働省が発表した「令和3年雇用動向調査」によると介護を担うことになりやすい40代~50代の人の介護・看護を理由とする離職率は次の通りでした。

 男性女性
区分合計一般労働者パートタイム労働者合計一般労働者パートタイム労働者
40才 ~44 才0.1%0.1%0.0%0.1%0.1%0.1%
45 才~49 才0.1%0.1%0.0%0.5%0.1%1.1%
50才~54才0.0%0.0%0.0%0.3%0.3%0.3%
55才~59才0.1%0.1%0.3%1.0%0.1%1.9%

男性より女性、一般労働者よりパートタイム労働者の方が介護離職をする人の数が多いのがわかります。

一方ミッシングワーカーとは労働経済学の用語で、雇用統計上求職活動をしていないため失業者としてカウントされない人たちのことを指します。

2018年6月2日に放送されたNHKスペシャル「ミッシングワーカー 働くことをあきらめて・・・」では専門家の推計で、ミッシングワーカーが103万人いると指摘されました。

介護離職をした人がそのままミッシングワーカー化すると社会的な損失や貧困層の拡大を生み、また本人にとっては社会との隔絶につながりかねないことから、まずは介護疲れを引き起こさないようにするのが重要だと言えるでしょう。

参考:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」

介護疲れへの対策

色紙を選ぶスタッフと高齢女性

介護疲れにはどのような対策を取るのが望ましいのでしょうか。

3つご紹介します。

レスパイトケアの活用

介護疲れを感じたら、まずはレスパイトケアの活用を検討しましょう。

レスパイトケアとは介護を担う家族が一時的に介護から離れ、休息をしてリフレッシュを図るために行われるサービスのことです。

レスパイトケアには次のような種類があります。

レスパイトケアの種類概要
介護保険サービスで行うレスパイトケア・訪問介護(ホームヘルプ)
・通所介護(デイサービス)
・短期入所生活介護(ショートステイ)
医療保険で行うレスパイトケア・レスパイト入院
介護保険外サービスで行うレスパイトケア・家事援助サービス 
・外出支援サービス 
・見守りサービス

介護保険サービス、医療保険で行うレスパイトケアは一定の対象者が定められている代わりに費用負担が少なく、介護保険外サービスは実費を支払う必要がありますが幅広いサービスの中から選べるのが特徴的と言えるでしょう。

介護保険外サービスの活用

介護疲れを感じたら、介護保険外サービスの利用を考えるのも良い方法です。

介護保険外サービスとは介護保険の対象とならないサービスのことで、利用料金は全額自己負担となるものの要介護認定を受けることなく利用できるのが特徴的だと言えるでしょう。

介護保険では介護を必要とする人の最低限の生活を支援するのを目的としますが、介護保険外サービスは介護を必要とする人の生活をより豊かにするのを目的としているため、介護者を楽にするためのサービスも幅広く提供されるのです。

介護保険外サービスはさまざまな運営主体により次のようなサービスを提供しています。

運営主体サービス内容
地方自治体・おむつ配送サービス
・訪問理美容サービス
・寝具の丸洗い
・乾燥
・消毒サービス
・配食サービス
・移送・送迎サービス
・緊急通報システム
社会福祉協議会・掃除・料理・洗濯などの家事サポートサービス
・車いす介助や付き添い
・話し相手などの介護サポートサービス
シルバー人材センター・留守番
・話し相手
・通院のつきそい
・見守り
・家事全般などの家事
・福祉支援サービス
介護サービス事業者・介護保険サービスでは提供できない家族の家事全般を行うサービス
・介護保険サービスでは提供できない身体介護サービス
・デイサービス利用者の宿泊サービス
民間企業・配食サービス
・介護タクシーなどの移送サービス
・家事代行サービス

ニーズに合ったものを選択することで、介護疲れをいやすことができるでしょう。

相談先の確保

介護疲れを1人で抱え込むとさまざまな問題が出て来るため、専門知識を持つプロがいる、次のような相談先に話をしてみるのが望ましいでしょう。

相談先連絡先
地域包括支援センター厚生労働省「地域包括ケアシステム」
地方自治体の介護保険課や福祉課東京都保健福祉局「介護保険課」
認知症に関する電話相談窓口など厚生労働省「認知症に関する相談先」

気持ちよく介護を続けるためにも、プロの手を借りて介護疲れをいやす方法を模索してみましょう。

まとめ

スタッフと笑いあう車椅子の高齢女性

介護疲れとは介護をすることによる身体的・精神的疲労のことを指しますが、高齢者虐待やミッシングワーカーの増加など社会問題を生み出す原因にもなるため早めに対策をするのが望ましいでしょう。

介護疲れを解消し自分のペースで介護に取り組めるようになるためにも、この記事を参考にして周囲のサポートを受けてみてください。

※掲載情報は公開日あるいは2023年06月05日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

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