更新日:2021年05月26日
公開日:2019年06月17日
食事介助に苦手意識を感じている介護職員さんのために、正しい食事介助の方法と気を付けるべきポイントをお伝えします。
■なぜ食事介助が必要になるのか
■食事介助前の準備
■食事介助の方法
■食事介助後の注意点
■スムーズに行うためのポイント
について書いています。
高齢者の方に「安心・美味しい・楽しい食事」を提供するためのコツをおさえ、ぜひ実践にいかしてください。
一人で食事ができない高齢者の方は、食事介助が必要になります。
具体的にどのような面でのサポートが必要なのでしょうか?まずは、身体に起こる変化を正しく理解し、その人の状態に合った食事介助をできるようになりましょう。
加齢とともに味覚や嗅覚が徐々に衰えていきます。
味蕾(みらい・味を感じる味覚細胞)の減少により塩味や甘みの感覚が低下するため濃い味つけの物を好んで食べるようになります。
また嗅覚が衰えると食事の美味しそうなにおいを感じられなくなるため、食欲の減退につながる場合があります。
「何時にどのくらい食べたか」など、介護職員がしっかりと食事管理をすることで、味覚・嗅覚の衰えによる食べ過ぎや栄養不足を予防し、高齢者の方の健康維持をサポートする役割があります。
歯を失ったり顎の力が弱くなると噛む力も衰えるため、自然に柔らかいものを好むようになります。食べられるものの幅が狭まるので栄養にも偏りが生じてしまいます。
「どのくらいの硬さ(大きさ)なら問題なく噛めるのか」を把握して、噛むことが負担にならないサイズ・軟らかさの食事を用意してあげましょう。
嚥下障害とは飲食物の飲みこみが困難になる障害です。のど、気管、食道等の神経や筋力の衰えが主な原因です。
嚥下障害がある方は食事によって「窒息(食べ物がのどに詰まる)」「脱水症状(水分摂取量が減る)」「誤嚥(ごえん)性肺炎(誤嚥により気管に細菌が入る)」などを引き起こす可能性があります。
誤嚥を起こさないためにも、正しい姿勢でリラックスして食事ができるように手伝ってあげましょう。
消化吸収器官である胃や腸の機能が低下することで、今まで通りの食事が難しくなります。
胃は加齢とともに弾力性や胃酸の分泌量が低下していきます。これにより食べものを胃に貯められず、胃もたれや消化不良で苦しくなってしまいます。
腸はぜん動運動などの腸の働きの低下や筋力の衰えによって、便秘や下痢を引き起こします。
消化吸収のよい食事を適量、規則正しい時間に食べられるように管理することで、このような事態を防ぎます。
まずは食事介助に必要な準備をしましょう。高齢者の方に楽しく安全に食事をしてもらうために、食事前の準備は非常に大切です。
・体調チェック
・排泄
・環境づくり
・声かけ
・口腔ケア・口腔体操
・手洗い
・姿勢
この食事前の準備が誤嚥性肺炎のリスク軽減にもつながります。怠ることなく必ず行いましょう。
食事の前に、今の体調はどうかを必ず確認してください。
・熱はないか
・食欲はあるか
・呼吸は乱れていないか
・覚醒しているか
・いつもと変わったことはないか
などのチェックです。
日常と違った点があれば、食事の量や内容の変更なども必要になってくる可能性があります。
細かく観察するようにしてください。
食事の前に必ず排泄を済ませておきましょう。
食事の途中でトイレに行きたくなってしまうと、食べることに集中できません。トイレに行くのを無理に我慢してしまったり、反対に早くトイレに行くために急いで食事を済ませてしまうというようなことが起こります。
高齢者の方が食事に集中でき、美味しく食べられるようにまずは排泄を済ませます。
食事を始める前の環境作りをしていきます。
テレビがついていたり、騒がしい場所では集中して食事ができません。落ち着いて食事ができる環境を作りましょう。
また食事する空間が清潔であることも重要です。物が散らかっている場合は片付けるなど、整頓された清潔な場所で食事をしましょう。
お部屋で食事をする場合は、においなどが残っていないかも確認しましょう。排泄のにおいが残っていると食欲が低下してしまいます。
食事前にうがいや歯磨きを行い、口の中を清潔にしておく必要があります。
嚥下障害がある場合は誤嚥してしまう可能性があります。その際に口腔内が汚れていると、細菌が気管に入り、誤嚥性肺炎のリスクが高まってしまうので注意深く確認しましょう。
口腔体操も、食事を美味しく食べるのに有用な方法です。口腔体操を行うことで、唾液の分泌が増したり、むせにくくなるのでぜひ活用してみましょう。
食事の前に手をきれいにしておくことは必須です。介助される人だけでなく介助する側も清潔にしておきましょう。
手洗いのための移動が大変な場合は、ウェットティッシュやおしぼりで汚れやばい菌をしっかり落としましょう。
しっかりと覚醒しているか、「今からごはんですよー!」と声かけをして確認しましょう。
そして献立の説明をします。
介助される方の中には、味覚や嗅覚、視力の衰えにより、何を食べているのか自分では理解できない方もいらっしゃいます。「これから何を食べるのかわからない」「何を食べても同じ」だと食事を摂る楽しみが半減します。
介助される方の食欲が少しでも湧くように、具体的に食事内容をイメージできるような説明をしましょう。
食事中の姿勢も誤嚥を予防するために重要です。
椅子に座れる人は深く椅子に座り、足の裏は床にしっかりと着けます。頭は後ろに反らないように顎は軽く引くようにしましょう。
テーブルの高さは、テーブルに乗せた肘が90度くらい曲がるくらいの高さが良いとされています。テーブルが高すぎると食事内容が見えなくなり、食欲が落ちるだけでなく、食べにくくなってしまいます。
自分で食べる意欲も削がれてしまうので、食事しづらい高さになっていないかを確認し調整してください。
ベッド上で食事をする人は、身体や本人の希望合わせてリクライニングの角度を45~70度前後に調節します。腰はベッドの折り目にしっかりと合わせ、膝は軽く曲げ、必要に応じて後頭部の後ろに枕やクッションを置き、首が後ろに反り過ぎないようにしましょう。
では、正しい食事介助の方法をお伝えします。
ポイントは以下の4つです。
介助者は同じ目線で介助ができるように座って行います。立って食事介助を行うと誤嚥のリスクにつながります。座る位置は介助される方の正面ではなくサイドに座りましょう。
食事の前に水分を摂り、口の中を湿らせておきます。そうすることで、口の中に入った食べものをのみ込みやすくなりスムーズに食事が進みます。食事の合間にもこまめに水分補給をはさみ、口の中を潤しましょう。
1回の食事量は介助用スプーン(なければティースプーン)に軽く一杯くらいが目安です。
スプーンは口の奥ではなく手前に入れます。そして口を閉じたタイミングでスッとスプーンを抜いてください。
飲みこみを確認するまで急かさないようにします。主食・副食・水分とバランスよく与えるようにしましょう。
食べ物を口に運ぶ前に「次は○○を食べましょうね!」と声かけをすることも大切です。何かわからない食べ物をいきなり口の中に入れられるとびっくりしてしまいますので気をつけてくださいね。
食事の時間は30分を目安にするといいでしょう。
それ以上時間がかかってしまうと疲れてしまうので、なるべく30分以内に終えられるよう心がけましょう。
ただし、ご本人の食事のペースが第一優先。決して急かしたりすることのないようにしてくださいね。
食事が終わったからと言って食事介助の仕事が終わりというわけではありません。重大な事故や危険につながる可能性がありますので、食後は以下のことに注意してください。
食事終了後は、食事の摂取量を確認してください。
食事の記録を付けることもおすすめです。残った食事やかかった時間など、その日の食事の詳細を記録しておくと、その方の食事の嗜好や傾向が見えてきます。
コミュニケーションをとれるのであれば、食べ物の好き嫌いや困っていることがないかなど聞いてメモしておくのもいいですね。
食後は義歯を洗浄したり、歯磨きを促して、口腔内を清潔にします。
食べ物が口の中に残っていると、誤嚥や窒息の危険性がありますので注意が必要です。
必ず一緒に口腔ケアを行いチェックするようにしてください。
食事の後、すぐに横になるのは避けてください。
万が一口の中に食べ物が残っていたらのどに詰まってしまう可能性がありますし、胃や食道から食べたものが逆流する場合もあります。
食後30分~1時間は横にならずに体を起こしておきましょう。
食事介助は、基本的には食事の度に行われるものですが、介助方法を誤ると、介助される人が食事をするのが苦痛に感じてしまいます。
食事介助のポイントをしっかり押さえて、食事を楽しんでもらいましょう。
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